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第98回 2010/01/01
オオタカ

オオタカ

オオタカ

(96)オオタカ 「タカ目タカ科ハイタカ属」
    英 名:Goshawk
    学 名:Accipiter gentilis

    漢字名:大鷹、蒼鷹
    大きさ:オス50cm、メス58cm

 




一富士二鷹三茄子ともいわれます。正月にちなんで、日本人には古くから親しまれ、時として尊敬の対象でもあったタカ、オオタカを取り上げましょう。世界的な生息域は、ユーラシア大陸、北アメリカ大陸、北アフリカの温帯から亜寒帯と幅広く、比較的低い山間部で繁殖し、その一部は冬になると、低地や比較的温暖な地方に移動します。さいたま市内では、もっぱら見かけることが出来るのは秋から冬にかけてで、暑さの厳しい夏の時期には見かけたことはありません。ただ意外と人里に近い場所、所謂里山で営巣している姿が最近見かけられることが多くなったといわれています。

営巣は、冬の終わりの2~3月に高い樹木の樹幹部に行います。 恐らく雛にとっては天敵のカラスから守るために目立ちにくい樹幹部に営巣するのだと思われます。春4月頃にだいたい三個を産卵、抱卵に入り、抱卵日数は約40日、夏場に育雛を行い、若鳥の巣立ちは夏の終わりの9月頃といわれています。

表題部の「大きさ」欄でも書きましたように、オスがハシボソガラスほどの大きさなのに対して、他の多くのタカと同様、メスは一回り大きいのです。雌雄ともに眼の上の眉線が白く明確で眼を横切る黒っぽい過眼線と明確なコントラストをなし、その中の黄色い虹彩が実に目立ちます。また成鳥腹部は白く、遠くを飛翔するオオタカは、背中は黒く腹部は真白に見え黒白のコントラストが目立ち、一見他の鳥に見えることもあります。

成鳥オスの白い腹部に多数に入る暗灰色の横線(横帯)は、かなり細く、メスはより太い、また翼や背中の色もオスが暗青灰色なのに対して、メスは若干褐色味が入ります。タイトルの写真は、キジバトを仕留めたオオタカですが(さいたま市大久保農耕地)、ハシボソガラスとほぼ同じくらいの大きさで、背中も青味が強いのでオスだと思われます。カラスは、猛禽類を嫌い空中では追い掛け回すのですが、一旦猛禽類が餌を捕捉し、食べ始めると、この写真のようにそのおこぼれを狙って近寄ってくることもあるのです。他方下の個体は、背中の褐色味が強く、メスだと思われます(千葉県手賀沼周辺)。

オオタカ(メス)

オオタカ(メス)

「鳥名の由来辞典」(柏書房)によりますと、奈良時代には「あをたか」、平安時代から「おほたか」と呼ばれたものが今日のオオタカにつながるようです。また、大陸から伝わったといわれる「鷹狩り」のタカも主としてオオタカ、それも大きいメスが珍重されたようです。同書によりますと、古来鷹狩りに使われたメスは「おほたか」または「弟(だい)」と呼ばれ、対してオスは「兄(せう)」と呼ばれたと説明しています。

伊勢物語に「むかし仁和のみかど芹川に行幸したまひける時、今はさること似げなく思ひけれど、もとつきにける事なればおほたかの鷹飼にてさぶらはせたまひける」とありますが、この時代(10世紀前半)には「おほたか」が使われ、鷹狩りが行われていたことが述べられています。

鷹狩りは、仁徳天皇の時代(4世紀)に始まったといわれていますが、歴史的に有名になったのは武家社会、それも江戸時代からで、徳川家康の鷹狩り好みは今なお伝え知られているところです。「天皇の鷹匠」を著した、諏訪流第16代鷹師、花見薫氏によれば、「日本の鷹狩りあるいは放鷹術が、技術的にも完成を見、本当に世界でも類を見ないものになったのは、何といっても三百年間の徳川幕府のもとでだった」と述べ、また、歴史的には鷹狩りにつかわれるタカは、このオオタカ以外にも、クマタカ(熊鷹)、ハヤブサ(隼)、ハイタカ(灰鷹)、ツミ(雀鷹)、コチョウゲンボウ(差羽)が使われたこと、その使い分けは捕獲すべき獲物の大きさを基準として決めていたことが解説されています。ただ、第2次世界戦争以前、戦中そして戦後に天皇家の鷹匠を務めた花見氏の時代には、狩猟用には、「ほとんどはオオタカとハヤブサの二種類」が用いられたようです。

タカは成長するのに2、3年を要するのですが、上述の花見鷹匠によると、鷹狩りの世界では、生まれて一年目の若を「黄鷹」、塒(とや)を経た後が「蒼鷹」、そして鶴を採った蒼鷹だけを「大鷹」と呼んだようです(武家社会を象徴する鳥は、まず鷹そして鶴だったのです)。「鳥名の由来辞典」では、一歳鷹は「黄鷹(わかたか)」、二歳鷹に「撫鷹(かたかへり)」、三歳鷹に「鴘鷹(もろかへり)」または「青鷹(あをたか)」と呼んだと記述しています。

オオタカの若鳥は、下の写真でお分かりの通り、成鳥の腹部にある横帯と異なり、太い黒褐色の縦斑が明確で、上部は淡い褐色で、過眼線もそれほど明確ではありません(さいたま市秋ヶ瀬公園)。それなりに存在感はあるのですが、やはり親鳥の格調の高さと風格にはかないません。

若いオオタカ

若いオオタカ

オオタカは冬の季語。

 大鷹の鳴くにめざめて梅雨しかし    水原秋桜子
 大鷹の女鷹の胸の間白さよ       橋本 鶏二

さいたま市内でもそうであるように、冬の期間には、都市部の郊外でも飛翔する姿を見かけることがあります。背中の黒っぽさとお腹の白さが目立ち、そして尾が長ければ、オオタカである可能性が大きいのです。冬の上空を見上げてみてください。





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