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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第91回ヒレンジャク
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第91回 2009/06/01
ヒレンジャク

アオバト
ヒレンジャク

(89)ヒレンジャク 
    「スズメ目レンジャク科レンジャク属」
    英名: Japanese Waxwing
    学名: Bombycilla japonica
    漢字名: 緋連雀
    大きさ:18 cm




昨年末から今年2009年初め、冬の関東地方の都市公園は、既にご紹介しました、アトリでにぎわいました。次いで、3月下旬頃から、今回ご紹介するヒレンジャクの群れが各地で観察されるようになりました。よく観察に出かける、さいたま市内秋ヶ瀬公園では、キレンジャクも仲間入りしました。一時は、ヒレンジャク、キレンジャクあわせて100羽にも上ろうかという混成群となりました。

バーダーにとって何とも魅力的なのが、その色彩と容姿にあることは、タイトル写真をご覧になってお分かりいただけると思います。ベルベットを思わせる柔らかそうな全身の丸みをもったブドウ色。頭部には先端の尖った冠羽。真っ黒で冠羽と平行する太い過眼線。喉の黒。下尾筒全体と尾羽の先端の赤。一度見かけたら忘れることはないでしょうし、他の野鳥と見間違えることもなさそうです。嘴の下の部分の黒斑部の境界が明確で、尾筒部の赤が鮮明であることから、この個体はオスだと思われます。

旅鳥や渡り鳥は、数の多寡はあってもその季節になると必ずやって来ます。しかし、このヒレンジャク、どうも気まぐれにやって来るようです。秋ヶ瀬公園に前回来たのは2007年3月(10羽前後)、そして2008年にはついに一羽も表れませんでした。それ以前には、わずか1~4羽程度が毎年来ていたように記憶しています。ここ以外の観察地でも同様で、毎年必ず現れるということはないようです(こうした不規則な移動を鳥類学的には「侵入」と呼ぶようです)。

繁殖地は、ユーラシア大陸東部(アムール川、ウスリー川流域)、越冬は沖縄を含む日本列島、朝鮮半島、中国南部、台湾といわれています。国内の都市公園では、繁殖地に戻る早春に観察されますが、やって来ているであろう秋に観察された事例を知りません。秋ヶ瀬公園では、ヤドリギやジャノヒゲの実を盛んに啄んでいますが、他にネズミモチ、イボタノキ、ニシキギの実なども採るようです。植物の実以外に、小昆虫も採るようですが、現場に行き合わせたことはありません。また、厳冬期には国内の山奥にいるはずなのですが、その観察例にも接することが出来ておりません。ただ、長野県の都市部で、庭のえさ台に置いたリンゴやミカンに群がっていたという記録がありますが、どうも一過性のものであるようです。

ヒレンジャク
ヒレンジャク
ジャノヒゲを食するヒレンジャク
ヤドリギを食するヒレンジャク

ヒレンジャクは、好物の一種であるヤドリギの実を採りますと、程なくフンとして排出を始めます(下の右側の写真を参照下さい)。ヤドリギの実を何センチかの間隔で粘液性のある糸状に繋いで排出するのです。これはヒレンジャクが意図的に行っているのではなく、ヤドリギの実のなせる業なのです。果実の周りを粘液性のゲル状の物質で覆い、それが果実とともに鳥の体内で吸収されず、直ちに排出される性格を持っているようです。そうしますと、ヤドリギの実を食べている間に、次々と果肉以外の部分が排出され、木の枝にまとわり付き、次の株を構成できるという仕組みです(下の左側の写真をご参照下さい)。ヤドリギは種子が地上に落ちてしまっては発芽できないのです。ヒレンジャクが何日かいることのできるヤドリギの「群れ」の周辺を良く見ますと、ヒレンジャクの排出したフンが糸状に何本も被寄生木(親木)の枝にまとわり付いているのが観察できます。これぞ、食べる野鳥と食べられる植物のコラボレーションともいえるでしょう。

ヒレンジャク
ヒレンジャク
フンとなったヤドリギの実
ヤドリギの実を排泄するヒレンジャク

左の写真でお判りの通り、粘液性の糸が枝に付いていますし、自身排泄中です。この個体は、嘴下部の黒い斑の境界が不明確で、下尾筒の赤味も薄いことからメスだと思われます。また右の写真のように、水辺で排出された種は、残念ながら発芽することは無いと思われるのです。

ヒレンジャクは、秋(晩秋)を表す季語です。

雲一つなき 雪嶺へ 緋連雀     篠田 悌二郎

真っ青な空、真っ白な雪山、それを背景に緋色の尾筒を輝かせるヒレンジャク、これは絵画の世界です。

緋連雀 一斉に立って もれもなし   阿波野 青畝

ヒレンジャクはだいたい数羽、数十羽の群れで餌を探して移動します。一羽が何らかの弾みで飛び立ちますと、その後を残りの群れが飛び立っていくのです。

今年の早春のような大きな群れとなったヒレンジャクの群れに、再び来年も会えるSことを期待してやみません。

 

 








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