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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第90回アオバト
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第90回 2009/05/01
アオバト

アオバト
アオバト

(88)アオバト 「ハト目ハト科アオバト属」
    英名 : Japanese Green Pigeon
    学名 : Sphenurus sieboldii

    漢字名: 緑鳩、青鳩、山鳩、尺八鳩
    大きさ: 33 cm





5月の連休が近づく頃になると、まず思い浮かぶのがアオバトです。といいますのも、例年、ほぼ連休明けに神奈川県大磯町の照ヶ崎海岸に多くのアオバトが海水を飲みに早朝押し寄せ始めるからなのです。タイトルの写真は、その照ケ先海岸に来たアオバトの群れです。

この時期から秋までの期間、照ヶ崎海岸では、夜明けとともに丹沢山系から、小さい群れで数羽、大きい群れですと100~200もしくはそれ以上のアオバトが群れをなして、次々に海岸の岩礁にやって来ます。おおよそ午前9時過ぎまでの飛来で、午前10時を過ぎるとほとんど途絶えてしまいます。また、観察していますと、飛んできた群れの全てが岩礁に降り立ち塩水を飲むのではなく、おおよそ20~30%ほどのグループは、何らかの危険を察知したのでしょう、岩礁の上を旋回するだけでそのまま飛び去って行きます。

クイナ
アオバト:照ヶ崎海岸

広い湘南の海岸線の中で、なぜこの海岸に集中的に来るのか地元の方に訊ねたことがあります。その方の説明では、この海岸の岩礁に空いた窪みがほぼすべて海水を貯めやすい方向に開いているからだとのことでした。確かに照ヶ崎の海に数ヵ所でている岩礁に数多く開いた小さい穴は、大体上を向いていました。残念ながら、この付近の海岸の他の岩礁を確認していませんので、確信をもっていうことはできませんが、確かに理由の一つであることでしょう。またこの岩礁群が、大潮の時も完全に海水下に沈み込むことがないことも、アオバトの訪問が慣習化してきた原因の一つであるかも知れません。

アオバトを日本固有種と理解されている方もいらっしゃるかもしれません(一部の解説書にはそう記述されています)。英名でもJapanese Green Pigeonと付けられているくらいです。残念ながら、冬季には、台湾から遠くベトナムまで越冬に飛翔する群れもあるようで、繁殖はすべて日本ですが、日本固有種とは言い難いようです。

よく見かける、キジバトやドバトと異なり、足指を除く脚は豊かな羽毛でおおわれています。羽に赤い部分があるのがオス、緑色なのがメスで、遠くから見ても雌雄の区別は明瞭です。この冬、千葉県松戸市にある東京都立八柱霊園に一羽のアオバトのオスが越冬しました。下の写真がそれです。

ヒクイナ
八柱霊園のアオバト

ご覧のように、額と喉、胸にかけての黄色味の強い緑色が鮮烈に森の緑に映えます。上で述べましたように、オスの象徴である羽の赤色は、よく見ますと紫色を帯びた赤色で、専門用語で小・中雨覆羽の部分に明瞭に現われています。また嘴の明るいコバルト色は、顔の黄色味を帯びた緑色と見事なマッチングを見せています。嘴の先には黄色味が入ります。これほどきれいな色合いの嘴は、国内で見かける他の野鳥では見たことがありません。

とても綺麗な色彩、非常に上品に見えるアオバトですが、鳴き声はびっくりするほど大きく、「アオアー、アーオー」、または「ワァオー、ワァオー」と聞きなせる、まるで叫んでいるようです。繁殖期だけにこの「叫び声」が発せられるようで、照ヶ先海岸では聞いたことがありません。さいたま市内見沼田圃の傾斜林で初めてこの声を聞いた時には、とてもこのアオバトの鳴き声だとは信じられませんでした。その後、あまり山深くない森でこの声を聞き、何度かその姿を見ようとしましたが、森の緑が保護色となってなかなか探すことがで困難でした。八柱霊園で観察できた時、やはりこのハトは、海岸でよりも林や森の中で見たほうが、その存在感が遺憾なく発揮されるものだと感心しました。

どうも、江戸時代には、アオバトが山の奥深くに住むところから「やまばと」と呼ばれたようですが、それ以前はキジバトを「やまばと」と呼んでいたようです。夏の繁殖期に鳴くことからでしょうか、俳句の季語としては夏です。

青鳩や林道つひに空を見ず   井沢正江

空を覆うほどに緑深い森の中、木陰の林道にこのアオバトの大きな声が響いているように映ります。

遠牧に青鳩鳴けばこたふあり  米谷静二

打って変わって明るい風景のようです。遠くの山々にアオバトの声がこだましているのでしょうか、呼び合っているのでしょうか。

山奥で、大きな「アォー、アォー」という声を聴かれたら、木々の間をよく探してみてください。ひっそりと佇む綺麗なアオバトを見つけることができるかもしれません。








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