アオアシシギ: シギ=褐色=丸みを帯びた外形、という印象をもたれている方がいらっしゃるかもしれません。そうした印象からしますと、タイトルの写真でお判りのように、脚と嘴そして体もほっそりと長く、大変スマートなシギです。ユーラシア大陸北部で繁殖し、南半球で越冬するといわれています。沖縄県内では越冬するアオアシシギが観察されていますが、越冬個体数はそれほど多くないようです。沖縄の例外を別にしますと、日本には、シベリアで繁殖をした後、東南アジア、オーストラリアで越冬するために立ち寄ったり(秋)、逆に、越冬地から繁殖地に向かう途中に羽を休めるために立ち寄ります(春)。典型的な旅鳥といえます。関東地方では、晩秋から初冬にかけてまで、寒さを感じるまで長く留まる、おそらくその年の夏生まれた若い個体群が良く観察されます。
汽水域(河口)、海水域(干潟)、淡水域(湖や水田)と採餌場所は多彩です。昆虫類、甲殻類、魚類、時としてカエルを餌とする肉食性です。タイトルの写真からは、ひっそりとたたずみ、物静かに餌を採るように想像されますが、実際にはかなり活動的です。小さい魚群を追いかけ回して捕えたり、砂や泥の中の餌を求めてかなり足早に動き回ります。下の写真は、小魚を捕獲して得意げなアオアシシギです。面白いことに、捕えた場所でそのまま飲み込むのではなく、水のない場所に移動して飲み込む姿を良く見かけます。
和名でアオという際には、緑を指しますが、このアオアシシギも、緑味を帯びた黄色の長い脚が特徴です。英語のGreenshank =緑の脚、もそれを指しています。黒く目立つ長めの嘴は、ちょっと上に反っています。腹部は白。遠くから見ても、長めのちょっと上に反った嘴、黄緑の長めの脚、白い下面の三ポイントで、アオアシシギであることが判別できます。ピョー、ピョー、ピョー(チョーチョーチョーと聞きなす方もいます)と、三声で、かつ大きな目立つ声で、飛び回っている時も、また採餌の途中でもよく鳴きます。一度覚えますと、この声だけでアオアシシギが居ることや、飛んできたことが判ります。
雌雄同色です。冬羽では、下面は真っ白、上面は褐色で、その羽の縁取りが白くはっきりしています。他方、夏羽では、胸の上部から首、顔にかけて黒褐色の縦斑が入り、上面の褐色の羽の縁取りは冬羽と比べると不鮮明になります。タイトル写真は、冬羽バージョンです。夏羽バージョンは下の写真をご参照ください。野鳥は普通繁殖期には色彩豊かで、ヒトの眼にも綺麗に見えるのですが、どうもこのアオアシシギは、私には非繁殖期のほうが魅力的に見えます。
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飛翔時の特徴として挙げられるのが、足先が尾羽より明確に出ていること、下面は全般的に白いこと、また上面では両翼の真ん中、つまり背中の部分がはっきりと白くそれが尾の白さにつながっていることが挙げられます。下の写真は、ハマシギと共に飛んでいる3羽のアオアシシギです(中央の大き目の2羽と一番高く飛んでいる右側の1羽。先頭から2羽目はオオハシシギで他すべてはハマシギ)。黄色っぽい脚が尾の先端よりでていること(但し一番左のアオアシシギの足には黒い泥が付いています)、背中と尾の白さがお分かりいただけるでしょうか。
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アオアシシギは夏の季語とされていますが、残念ながらこのコラム執筆段階で、アオアシシギを詠んだ和歌、俳句を見つけることはできませんでした。ご存知の方がいらっしゃったらお教えください。
季節のシギの仲間としては、比較的に観察することが容易なアオアシシギです。大きめで、おなかの白いスマートなシギをお近くの水辺で探してみてください。