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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第92回キレンジャク
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第92回 2009/07/01
キレンジャク

キレンジャク
キレンジャク

(90)キレンジャク 
    「スズメ目レンジャク科レンジャク属」
    英名: Bohemian Waxwing
    学名: Bombycilla garrulus

    漢字名: 黄連雀
    大きさ:19.5 cm




先回ご紹介したヒレンジャクに姿形、それに生態も大変よく似た、キレンジャクをご紹介します。ヒレンジャク、キレンジャクともに英名では、Waxwingが使われます。Waxとは蝋、Wingは翼ですが、それはキレンジャクの次列風切羽の先端に、赤い蝋状の突起物があることから付けられたものです。タイトルの写真を良くご覧ください。小さく赤い突起物が2個出ているのがお分かりになることと思います。この蝋状突起物があるのは、このキレンジャクだけで、ヒレンジャクにはありません。しかし全体の形状が大変よく似ていることから、ヒレンジャクにも(Japanese)Waxwingとつけたのだと思われます。

日本名の「レンジャク」は、群れて飛翔する習性があり、その習性を連なるとし、小鳥の部類に属することからスズメ(雀)をあて、連雀と付けられたといわれます。「鳥名の由来辞典」(柏書房)によりますと、江戸時代前期までは、ヒレンジャク、キレンジャクの区別はなされることがなく(本朝食鑑)、江戸時代中期に入って区別されるようになった(喚子鳥)と説明されています。

ユーラシア大陸東部に限定的に繁殖するヒレンジャクとことなり、キレンジャクはユーラシア大陸中央部やスカンジナビア半島、アメリカ大陸北西部と広く繁殖地があるようです。日本へは越冬のため渡ってくるのですが、ヒレンジャクと同様、出現の頻度はとても不安定で、年により大きく変化があります。繁殖地での気象条件の変化により餌となる木の実の多寡が影響を与えているものと思われます。「日本の野鳥」(山と渓谷社)によれば、木の実が豊作である年は、あまり渡りをせず、餌場にとどまり、その翌年は、豊富な餌により増えた若い個体群とともに越冬地へ向かうという研究結果が欧州の研究者によって報告されているとのことです。

キレンジャクはヒレンジャクより一回り大きく、その名のごとく尾の先端部が黄色ので、この箇所が赤いヒレンジャクとすぐに見分けがつきます。下の写真で、キレンジャクのほうが大きいことがお分かりいただけるでしょう。

キレンジャク&ヒレンジャク
キレンジャク&ヒレンジャク

大きさ以外の相違点を見ていきましょう。まず双方黒く良く目立つ過眼線がありますが、ヒレンジャクは、冠羽に沿って先端まで延びていますが、キレンジャクの過眼線は、後頭部までの長さです。上の写真でご確認ください。更に、ヒレンジャクの下腹部は白いのですが、キレンジャクは薄い褐色味を帯びた灰色をしています。下左の写真で確認できます(喉の黒い斑の境界が不鮮明ですので、この個体はメスかと思われます)。尾の先端の色(キレンジャクは黄色、ヒレンジャクは赤色)が観察できないような条件では、腹部の色の違いはこの2種類のレンジャクを見分ける便利なポイントとなります。下右の写真は、ピラカンサの小さい木に生った実を食べているところですが、黒い過眼線が細く冠羽上部には達していませんし、下腹部に白いところがないことから、キレンジャクだと判別できます(この個体もメスのようです)。国内では、関東以北から山間部ではキレンジャクが、関東以南ではヒレンジャクが多く観察されるようですが、年によって大変ばらつきの多い出現率を見せる野鳥ですので、これとてあまり当てになりません。

正面から見たキレンジャク
木の実を食べるキレンジャク
正面から見たキレンジャク

木の実を食べるキレンジャク

キレンジャクは秋の季語。江戸時代初期まで区別がなかったせいか、古い句は見当たりません

黄連雀 一羽こぼれて 収まりぬ    永田 耕一郎

実のたわわになった小枝にキレンジャクが群がっていたのでしょうか。ユーモラスであり、ちょっと晩秋のペーソスを感じさせる句です。

なかなか観察できる機会が少ないのですが、それは他の渡り鳥と異なり、毎年定期的に飛来することがないからです。いったん渡って来た時には、かなりの数が、都市公園、人家、街路樹などで木の実を食したり、ヒトの作った果物を置いた餌台に群がったりする様子が容易に観察できます。あまりヒトを恐れることもないように見受けられます。

餌さえあれば、それを食べつくすまでの一定期間は、その場所にとどまります。まだご覧になられたことがない方は、レンジャク飛来のニュースを耳にされたら、一度ご覧下さい。ちょっと太り気味ですが、赤く突き出した冠羽をもった、凛とした装いの印象深い野鳥です。

 

 








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