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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第95回キアシシギ
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第95回 2009/10/01
キアシシギ

キアシシギ

キアシシギ

(92)キアシシギ  「チドリ目シギ科キアシシギ属」
    英 名:Grey-tailed Tattler
    学 名: Heteroscelus brevipes

    漢字名:黄脚鴫
    大きさ:25 cm


春と秋、旅鳥として日本にやって来るシギの仲間、キアシシギです。国内では、季節になると最も普通に観察できるシギですので、珍鳥や迷鳥の観察や撮影を専らとするバーダーの方々からは、あまり注目されることがないように思われます(キアシシギとよく似た、後述するメリケンキアシシギとは注目度がまったく違います)。しかし、実はこのキアシシギ、世界的な分布を見た場合非常に棲息圏が限定的で、北米や欧州で観察されることはなく、シギ・チドリの研究者から見れば、日本のバーダーは、非常に恵まれているともいえるのです。繁殖地はシベリア東部、越冬地は、東南アジア(インドネシア、フィリピン、ニューギニア島)からオーストラィア沿岸部で、国内では全土で観察されています。

その名前の通り、脚は黄色です。体長のわりに脚は短めで、短足なシギというイメージがまずわきます。地上に降りて採餌しているシルエットは、決してスマートとはいえません。でも、群れを成して飛翔している姿はまったく別で、羽は長く、飛翔速度も結構速く、とても華麗です。タイトルの写真は、小さい群れで潮の満ちた干潟に浮かんだ小さな場所(実は転覆したボートです)で、休息を取るキアシシギたちです(ただし、一番右の個体はキョウジョシギです)。

このキアシシギは実に良く鳴きます。地上では「ピューイ、ピューイ」、また飛翔時には「ピュイー、ピュイー」と濁りのない明朗な鳴き声です。個体でいるときより、群れでいるときのほうが良く鳴くようです。海辺、干潟、河口などの海水域や汽水域で多く観察されますが、水田や水のある休耕田でも見ることができます。カニ、小魚、水生昆虫などを餌とする動物食性です。じっと立ち止まって餌を探すのではなく、常に動き回って実にアクティブに採餌します。下は、小魚を追いかけ、捕捉したキアシシギです(図鑑では、キアシシギが魚を食べることはあまり記述されていません)。

キアシシギ
キアシシギ
小魚を追いかけているキアシシギ
魚を捕捉したキアシシギ

休息時、このキアシシギは相対的に高い場所を好むようです。テトラポットの上、杭の上、防波堤の上などで、撮影するには好都合な被写体でもあります。下の写真は、岩の上でノビをしている夏羽のキアシシギです。夏羽では、頸から顔にかけて灰褐色の斑があり、胸から腹部にも波状の斑が入ります。それに対して冬羽では、そうした灰褐色の斑が消えるのが特徴だといわれています。

キアシシギ
ノビをするキアシシギ

さて、冒頭で触れましたキアシシギに非常によく似た、メリケンキアシシギについてご説明します。このメリケンキアシシギは、アラスカ南部で繁殖、越冬は南太平洋の島々だといわれています。従いまして太平洋のアメリカ大陸西海岸に沿って北上または南下するのでしょうが、時として日本列島太平洋岸に立ち寄る少数が観察されています。下の写真は、今年(2009年)銚子港に立ち寄った数羽のメリケンキアシシギのうちの一羽です。

キアシシギ

メリケンキアシシギ

全長28cmで、キアシシギより大きめです。キアシシギの嘴基部は赤味を帯びていますが、メリケンキアシシギは黒くほとんど赤味を帯びません。また、体下面の灰褐色の縦斑が明確で下尾筒にいたるまで密に入っていますが、キアシシギではそれほど密に入らず、また脚の付け根や下尾筒の部分は白色で斑は入りません。また、嘴にある鼻孔から続く溝は、嘴の3分の2に及び、半分ほどのキアシシギとは異なっています。また、翼端は、尾端より突出する傾向があります。 (キアシシギは、尾端と同じか短い) 嘴基部の色、下腹部の斑の密度が分かりやすい区別点かと思われます。キアシシギとの違いをお分かりいただけたでしょうか。

キアシシギは季語では秋とされていますが、キアシシギを歌った句にはお目にかかっていません。旅鳥としてやってくるシギの中では、時期的に早く、また数多く渡ってくるシギです。ちょっと目に、胴長短足といった趣の、脚が黄色で、嘴は真っ直ぐなシギ、それがキアシシギです。見慣れると分かりやすいシギです、砂浜、磯、あるいは水のある田圃で、春と秋、探してみてください。

 







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