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第112回 2010/02/01

「クライメート・ゲート」

 2010年度も一月を経ました。今日から旧暦でいう如月(きさらぎ)です。この如月という漢字は、中国で使用されていたものをそのまま流用したといわれています。もっともな説と信じられているのが、衣更月、もしくは絹更月と書き、寒さが厳しさを増す中で、衣(もしくは絹)を更に重ねる月という意味だとされています。いずれにせよ比較的暖かだった一月よりも、寒くなることは間違いないでしょう。

 昨1月下旬、NHKテレビの朝のニュースで、「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、ヒマラヤ氷河問題に関する記述について、その根拠が不明確であったことを認めた」と報道しました。残念ながら、この件はその後、国内の大手新聞でも取り上げず、国内では一部の環境問題ウォッチャーだけの話題で幕を閉じられる気配です。

 実は、この問題は、自然環境保護問題に関する、IPCCのデーターは、故意に環境破壊の危機を煽り立てるために捏造されたものが多いのではないかという昨年暮れからの国際的な議論、「クライメート・ゲート」解明の一環で明るみに出されたものだったのです。IPCCは、ヒマラヤの氷河について、第4次評価報告書第10章(アジア)で次のように述べていました。

 「ヒマラヤにある氷河は、世界のほかのどこよりも急速に後退しており、もし地球が現在の速度で温暖化し続け、現在の速度での後退が続けば、2035年までに、あるいはそれよりも早くそれらが消滅する可能性は非常に高い。」(日経エコロミーをご参照下さい)

 あとわずか四半世紀のうちに、ヒマラヤの氷河が融解するというのですから大変な危機です。その根拠がある個人の推測でしかなかったと、IPCC自体が自己暴露したのです。問題は、誰が何の目的で、環境破壊の危機感を煽り立て、所謂環境保護の国際的なルールの成立を急がせようとしているのかです。

 善意ある私の知人は、「地球環境の破壊が食い止められるのは決して悪いことではなく、その目的のために多少の誇大な表現は必要悪として認めてよいのではないか」と語ります。大気が汚染され、河川が汚濁され、灰燼にまみれた交通網を眼のあたりにして不快感を抱かない人間はいないでしょう。自然環境が、少なくとも今現在より悪くならないよう最善を尽くすという努力は、それが達成されるのであればそれに越したことはありません。しかし、グローバル化した現在の人間社会は、日々電力を含む動力を消費し続けています。この流れをストップすることは誰も出来ません。二酸化炭素排出の源であるとされる石炭、石油に代わる代替エネルギー、例えば原子力も、それを実際に安全に使用するには膨大な設備と費用を必要とします。 人間の生活は、自然環境をいずれにせよ蝕むことによってしか維持できないのです。

 自然環境問題について、私が懐疑的なのは、その宣伝活動が、善意ある行為の名の下で、ある一定のグループや人々の利益の誘導に利用される可能性が極めて強いからです。この点については既に多くの著書が書かれていますので、詳細はそちらを参照下さい(例えば、「エコロジーという洗脳」副島隆彦)。省エネルギーは、今や多くの大メーカーの共通した宣伝文句です。

 動力を使用し、空路を含む高速な交通網を駆使した現在に生きる人間の社会生活は、必然的に自然環境を破壊していきます。どのように工夫しても、使用されたエネルギー自体はただ消失するだけです。更に本質的に、地球自体の寿命は有限だとされています。その限られた地球の星としての寿命よりも、地球上の全生命体の寿命は短いとされています。ですから、人間は、限られた種としての寿命を出来るだけ永らえるよう工夫するしかありません。これは、自然を守ることではなく、出来るだけ自分たちが生きながらえるために、自然の破壊のテンポを遅らせ、破壊の規模を最小限にとどめる努力をすることとしかいいようがありません。

年賀状

 ノーベル平和賞を2007年に受賞した、もとアメリカ副大統領のゴア氏の「不都合な真実」には、多くの事実誤認と誇張が見られることが分かってきました。自然環境が危機にあることを認めることは、人間の社会生活と自然との係わりのあり方を素直に見直すことですが、その危機を過度に煽ることは、ある一定の利益集団のもとへ環境保護の名目で資金と多くの人々の善意を導く結果となりかねないことを十分警戒する必要があるように思われます。

 先月、香港の米埔自然保護区で見かけた、「クロツラヘラサギ」です。全世界で2,000羽しか生き残っていないと推定されています。自然破壊のテンンポの遅からんことを祈るばかりです。

 

 




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