シベリア中央部から東部の亜寒帯で繁殖し、冬になると国内にも越冬に渡って来る冬鳥です。ところがこのオオマシコ、他の小型のアトリ科の野鳥の様に都市型の公園で見かけることはまずありません。主たる越冬先は、モンゴル、中国東部、朝鮮半島で日本海を渡って我が国までやって来るのはどうも少数派の様です。また、私の知る限り越冬地は1,000mもしくはそれ以上の高地なのです。さらに、他の多くの野鳥同様渡りの個体数にはシーズン毎にむらがあります。渡りの少ないシーズンともなりますと、観察できる機会は大変に少なくなるのです。
不思議なのは、このオオマシコが越冬する地域はまず間違いなく冠雪する区域となります。遠くシベリアから日本海を渡って冬場に飛来するのですが、餌を求めるだけでしたらもう少し積雪のない平野部や丘陵地域を選んではと思うのですが、なぜ積雪必須な山間部でわざわざ越冬するのか分かりません。単独行動よりもむしろ数羽程度の小さい群れで移動しているようです。観察できた限りでは、植物の実それも特にハギ類の実を餌としていますが、動物性の餌を全くとらないのかどうかは不明です。
さてこのオオマシコ、オスは上のタイトル写真でもお分かりのように全身独特の朱色をしています。マルボーロレッドよりも紅色に近いと言ったらよいのでしょうか。ベニマシコの赤さとは一線を画しています。成鳥オスのこの全身の赤さがこの野鳥の魅力で、多くのバーダーを惹きつける最大の魅力となっていることは間違いありません。猿子(マシコ)の名前も、この赤さに由来しているのでしょう。
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アトリ科の野鳥の中では、比較的に大きい方で体長17cmといわれています。成鳥オスは紅色の頭部に、上嘴上部の額の部分から頂部にかけてと、両顎の部分に銀白色の羽根が生え、特に顎の部分は銀色のひげのように見えます。この銀白色の部分の発育がない、もしくは少ないものはオスの若鳥だと考えられます。タイトルと上左の画像は成鳥オス、上右の個体にはうっすらと額の部分に白い羽毛が生え始めています。若いオスでしょう。下左の個体にはまだ白い羽毛が生えていませんが、これはおそらく今年生まれの若鳥オスではないかと思われます。
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ちょっと難しいのが若いオスとメスの区別です。上左は若いオス、上右と下はメスだと判断しています。国内への飛来数が少ない(もしくは観察する機会が少ない)ためでしょう、若いオスと成鳥メスの区別を明確に記載した図鑑や資料を探し出すことができていません。上の左右の画像を比べて下さい。左の個体には嘴を中心に紅色味が入っています。他方右の個体と下の個体の赤さには柿色味があります。私はとりあえず、赤の色味で若鳥オスとメスを区別してよいのではないかと考えています。残念ながら、繁殖期のオオマシコの雌雄に出会うことはできておりませんので、はたしてこの判断が正しいのかどうか、今後の観察に待ちたいと思っています。
冬木立 バサリと降りる オオマシコ 虚心
オオマシコは、秋の季語とされていますが、この句では冬の風景。これまでの観察からしても、国内でオオマシコを秋に見かけたことはありません。雪景色の中のオオマシコ、それも成鳥のオスであればさぞ色彩鮮やかな見事な絵となってくれそうな印象を受けています。枝に積もった雪がその重さでバサリと落ちるかのように、オオマシコは重量感を感じる野鳥で、地表の草の実を啄ばみに枝先から下りてくる様子が目に浮かぶ句です。オオマシコのいそうな場所に今シーズン出かけることができればよいのですが。
注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。