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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第102回ベニマシコ
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第102回 2010/05/06
ベニマシコ

ベニマシコ

ベニマシコ

(100)ベニマシコ 
      「スズメ目アトリ科ベニマシコ属」
    英 名:Long-tailed Rosefinch
    学 名:Uragus sibiricus

    漢字名:紅猿子
    大きさ:15 cm

 


関東近在のバーダーにとって、冬の時期、最も人気の高い野鳥のひとつ、それがベニマシコです。スズメより僅かに大きい小鳥です。全身が赤いオスのベニマシコは多くのバーダーを魅了させます。といいますのも、意外と身近な都市公園でも冬には観察できる機会が多いからです。繁殖期には、越冬期とは比較にならないほどこの赤さが鮮やかさを増すそうですが、残念ながら観察の機会が目下ありません。

国内では、青森県下北半島やその北の北海道で繁殖し、冬になるとより南に越冬のため渡って来ます。世界的には、ユーラシア大陸東部で生息します。越冬期間中は、平野部、低い山間部で、どうも水辺の草原(湿原、芦原)を好むようです。小さい群れで移動し、木や草の実を懸命に啄む様子が見かけられます。枯れ草や木の枝で目立つ一羽を見かけたら、注意して周辺を見回すと2,3羽が見つかるということもよくあります。

タイトル写真(北本市自然観察公園)でもお判りの通り、嘴は短く太めで丸みを帯びています。同じように赤い鳥、オオマシコは嘴がより長く、このように丸みを帯びてはいません。この短く太目の嘴はかなり固い実も噛み砕けそうな頑丈さを感じさせます。また、尾が長く、そこから英名のLong-tailed(長い尾)Rosefinchが付けられています。

また、オオマシコと異なる特徴のひとつに、尾の両端が白いことが挙げられます。下の写真(手賀沼の辺)をご覧下さい。草の実をたくさん咥えて飛び立った正面ですが、尾の両端が白いことがお分かりになるでしょう。オオマシコはこの端羽が黒く、その端が僅かに白い程度なのです(またオオマシコの尾には赤い羽根もまざります)。

草の実を咥えたベニマシコ
草の実を咥えたベニマシコ

これまで見かけた、冬のベニマシコが餌としていた植物は、ヒカゲイノコヅチやセイタカアワダチソウの実、ハンノキの奬果、春先にかけてはネコヤナギの新芽でしたが、これ以外にも、エノコログサ、イヌタデ、ママコノシリヌグイ、ヨモギなどの草の実、そしてムラサキシキブやタラノキなどの奬果も、またノイバラやサクラ類の新芽も食べる(野鳥図鑑―早稲田大学 自然環境調査室オリジナル)そうです。冬から春にかけてはこうして広範囲な草や木の実や新芽を食べるのですが、繁殖期には昆虫類を主な餌とするようです。

ベニマシコの地鳴きはよく知られているように、「フィホ」もしくは「フィツ」と一声で鳴き、連声では鳴きません(この点は、アオジやカシラダカと同様です)。このフ「フィホ」の声で周囲をよく探してみると思いもかけない場所で見つけることができたことも何度かあります。ベニマシコの囀りと動画のサイトがありました。

http://www.flipclip.net/clips/d8f42e3cb7a4bd23ac82dfa9120e4d82/popup

マシコとは猿の顔のように赤い鳥をさすのですが、アトリ科の赤い鳥、ベニマシコ、オオマシコは、鎌倉時代では区別されずに一様に「ましこどり」もしくは「ましこ」と呼ばれ、オスは特に「てり(照)ましこ」とよばれたようです(「鳥類の由来辞典」柏書店)。メスは、下の写真(真岡市井頭公園)のように頭部から腹部にかけ褐色で、赤味はありませんが、羽に二条の白線があるのはオスと同様です。

ベニマシコのメス
ベニマシコのメス

ベニマシコは秋の季語です。

枯枝にひとりしぐるる照猿子鳥       彫棠

晩秋に、来る冬を思わせるちょっと哀愁を感じさせる句です。

ネットで検索した句です。

べにましこまざまざと目の前にをり     谷上光晴

時としてベニマシコはヒトを恐れず、すぐ目の前で草や木の実をひたすら食べることがあります。小さく、紅い、稀な鳥が眼前で自由に採餌する姿にちょっとあっけにとられ、驚いた気持ちがよく分かる句です。

今年最後にベニマシコを見かけたのは手賀沼の辺、4月上旬でした。ほとんどのベニマシコがもう5月になった今日時点では、繁殖地へ旅立っていることでしょう。戻ってくるのは恐らく11月以降でしょう。来る晩秋に、小さな赤い鳥を、水のある草原で見つけてみませんか。










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