夏羽と冬羽で極端に色や形状が異なる、カイツブリの仲間です。毎年、冬になると湖沼や、海岸沿い、内湾に、大きな群れでやってくる冬鳥です。穏やかな水面領域を好むことから、水鳥の中でも比較的ヒトの目に触れる機会が多い野鳥といえます。
日本に冬やって来るハジロカイツブリは、ウスリーから中国東北部で繁殖するグループのようですが、世界的には、ヨーロッパ、アフリカそして南北アメリカにも生息することが確認されています(豪州、南極大陸以外のすべて)。全世界的に生息分布が広がってはいるのですが、繁殖地域はかなり限定されたもののようです。
タイトルの写真は、夏羽で、繁殖地に戻る直前の衣替えをしたハジロカイツブリです(3月東京都・葛西臨海公園)。頭部、胸から背中全体として黒く、眼の後ろ側に金色に輝く飾り羽が真っ赤な虹彩とアイリングと、コントラストをなして、実に派手やかです。まるで赤い眼から金色の炎が噴出しているかのように見えませんか。またこの写真でははっきりとしませんが、胴体部は褐色です。
英語名のクロクビ(Black-necked)カイツブリ、米語名のミミ(Eared)カイツブリは、ともにこの繁殖期、夏羽のハジロカイツブリの状態を見て付けられたものであることは間違いなさそうです。
さて、上の写真は、夏羽とはうって変わった冬羽のハジロカイツブリです(1月、千葉県銚子港)。これが同じ鳥かと驚くほどの変化を見せてくれます。頭部の眼を含む上半分は褐色、嘴基部から後頭部の下半分は白、背中も褐色です。ご覧のように頭部の白と褐色の境界線はありません。虹彩は実に赤く、派手な夏羽のときにも目立ちますが、地味な装いの冬羽の時期にはこの赤さだけが浮き彫りにされる感じがします。また僅かに上に向いている嘴の形状も、よりはっきりと見分けられるのもこの時期といえます(ハジロカイツブリによく似た、ミミカイツブリは、嘴がまっすぐです)。
大集団で群れることも、数羽の小集団でいることもありますが、採餌の際は実に頻繁に潜水を繰り返します。潜水に際しては、ちょっと飛び上がり首からジャンプインします。下は、まず潜水しようとしているポーズ、そして飛び上がり頭部が水面に達したところ、そして胸まで水に入り、尾羽部だけを残して水に入り込みました。最後の写真では偶然脚の骨格が写っています。
なんともダイナミックな潜水の形態です。餌は主として魚、また水中の貝、甲殻類の他に、時として空中の昆虫も捕獲することが観察されています。また、多くの野鳥は危機を感知すると素早く飛び立とうとしますが、このミミカイツブリは飛ぶ代わりに水中にもぐりこもうとします。よほど水中遊泳に自信があるのでしょうか。
ハジロカイツブリは、冬の季語ですが、残念ながらハジロカイツブリをうたった句は見出せませんでした。あまりなじみのない名前の水鳥ですが、海岸沿い、湾内、大きな湖などでは決して珍しい鳥ではありません。よく水にもぐる黒と白のコントラストがあり、眼の赤い野鳥を探してみてください。それがハジロカイツブリです。