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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第171回スズガモ

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第171回 2016/3/01
スズガモ
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スズガモ

171)スズガモ「カモ目カモ科ハジロ属」

    英 名:Greater Scaup/Diving Duck
    学 名:Aythya marila .
    漢字名:鈴鴨
    大きさ:♂46cm、♀43cm

 早いものできょうから三月、早春の兆しが表れる頃となりました。まだ残っているカモたちの中から、今回はスズガモをとりあげてみます。現在東京湾岸に飛来するカモの最大の群れはスズガモだと思われます。内陸の湖沼に越冬地を求める多くのカモと異なり、スズガモは沿岸部、それも外洋近くにまで大きな群れを作って越冬しますので、海岸沿いにお住まいの方や、バーダー以外には、あまりなじみがないかもしれません。でも現実には、東京湾には、毎冬最大6万羽にものぼるスズガモが大きな群れを作って越冬しているのです(10万羽という説もあります)。

 カモの仲間は、餌をとるのに水中に完全に潜るタイプ(潜水採餌)と首や胸の部分だけを水につけて採餌するタイプ(水面採餌)がいますが、このスズガモは潜水型採餌法を取る代表的な種類です。他には、ミコアイサ、キンクロハジロ、ホシハジロなどが水に潜って餌をとるカモたちです。この中では、スズガモは比較的長く潜っている方で、一説には平均25秒間、最大1分間も水中にいることができるといわれています。こうして潜水して探す餌はほとんどが貝類だといわれ、そのまま丸呑みし、強力な消化器官(砂嚢ー砂肝ー)で消化するようです。水中にいる間にん見込んでしまうのでしょう、水面に浮上して飲み込む姿は観察できておりません。まれに海藻(水草)も餌とするといわれていますが私は観察したことがありません。水面で休息をとっているとき以外は、実によく水中に潜ります。

 繁殖地は北アメリカ大陸からユーラシア大陸の高緯度地の全域に及び、越冬はそれぞれの中、低緯度地域。国内での越冬は全国に及んでいるようです。

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スズガモ♂

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 雌雄の区別は明確です。タイトル写真と上の2枚はオス、下の2枚がメスです。スズガモは雌雄ともにキンクロハジロと似ています。オスの場合、スズガモには頭部に冠羽がなく(キンクロハジロにはある)、また背中が白っぽい青灰色です(キンクロハジロは黒)。他方でメスは、嘴基部に目立つ白い輪模様の斑があります(キンクロハジロにはない)。しかし、実際にはメスで嘴基部に白い斑のない(もしくは目立たない)スズガモがいたり、嘴基部に白い斑のあるキンクロハジロもいるのです。そのような個体に出会った場合、キンクロハジロメスにはオスほど目立ちませんが冠羽があること、また背中の色がより黒っぽいこと、また一回り小さいことをめどに区別できます。

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スズガモ♀
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 上の写真右をご覧ください。黄色の虹彩に縦にラインが入っています。あたかも瞼が左右に開くかのようです。当初これを観たときカモ(もしくはスズガモ)は、瞼の運動が特殊な構造になっているのだと思いましたが、いくら調べても脊椎動物はすべて上下運動するようです(ただ、すべての動物がヒトのように上から下に動くだけでなく、下から上に動くものもいるようですが)。どうもこれは瞼ではなく、瞼と眼球の間にある瞬膜のように思われます。 瞼は上下に垂直運動しますが、瞬膜は左右に水平運動するのです。潜水型のカモは水中での採餌活動に際して、瞬膜を最大限に利用しますので、水上に上がってきても瞬膜を左右運動させることがあるようです。潜水型カモを観察される際には、眼にもご注目ください。

 スズガモの名前は、飛ぶときの羽音が金属質で鈴の音に似ていることからといわれています。おそらくその羽音を声として詠んだのではないかと思われる句です。月が必ずしも夜出ているものではないかもしれませんが、スズガモは夜にも積極的な採餌活動を継続します。

 鈴鴨の声ふり渡る月寒し  服部嵐雪 

 また、スズガモの群れの大きさを歌ったと思われる句です。

 鈴鴨の揺すりて池の面動く  佐々木六戈

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 上は千葉県船橋市の三番瀬海浜公園で一斉に飛び立つスズガモです。三月下旬にはほとんどが北方へと飛び立っていくスズガモです。まだ観察されていない方がいらっしゃれば、是非早春の海辺でスズガモの大群を探してみてください。

 

注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 

       


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