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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第168回クロサギ

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第168回 2015/12/01
クロサギ
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クロサギ

168)クロサギ 「ペリカン目サギ科シラサギ属」

    英 名:Pacific Reef Heron
    学 名:Egretta sacra
    漢字名:黒鷺
    大きさ:62 cm

 シラサギ(白鷺)といえば、コサギ、チュウサギ、ダイサギに代表される全身白いサギ類の総称で(カラシラサギやアマサギもこれに入ることもありますが)、種の名前ではありません。これに対して、右のタイトル写真のように全身真っ黒なサギがクロサギ。こちらはれっきとした種名です。詐欺師の世界を描いたコミックのタイトルで「クロサギ」という作品(テレビドラマにもなりました)がありましたが、ここでご紹介するのは野鳥のサギの仲間の黒鷺です。余談ですが、詐欺師の世界で、ヒトを対象として金銭をだまし取る詐欺師を白鷺とかいて「しろさぎ」と読ませるようですが、鳥の白鷺はシラサギと読みます。その詐欺師しろさぎをだますのが「くろさぎ」とされています。希少で、したたかということなのでしょうか。事実、クロサギはシラサギのどの種類と比べても生息数は少ないことは間違いないでしょう。

 サギの仲間は、従来コウノトリ目に分類されていましたが、2012年の日本鳥類目録第7版で、「ペリカン目」と変更されました。インターネット上の情報ではまだ以前のままのコウノトリ目としているサイトが多いようです。シラサギの多くが淡水系、汽水系、塩水系を問わず生息するのに対して、クロサギはもっぱら塩水系(時として河口などの汽水系)で、海岸沿いに生息します。 世界的な分布は、本州以南から東南アジア、更に南下してオーストラリア、ニュージーランドといった、南北にわたる東半球。私が初めて観察できたのは宮崎県青島でした。その後、沖縄でも見かけましたが、長く関東地方では観察できない状態が続きました。野鳥観察者に共通したことかもしれませんが、2000年代に入ってある日偶然、九十九里浜でみかけ、その後意外と簡単に銚子港、三浦半島の城ケ島と次々と見かけることができました。国内の繁殖北限は房総半島ではないかと思っております。ただ夏鳥として、東北地方や北海道に夏の時期に飛来した記録もあるようです。

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 クロサギといっても、個体差があり上左の様に白いクロサギ(白色型)もいるのです。嘴の形状、色そして脚の形状と色をよく観察すればシラサギの仲間と間違えることはなさそうです。クロサギの方が嘴も脚もともに短く、がっしりとした印象を受けます。とはいっても、シラサギの仲間と混在していますと見過ごしてしまいます。上左の個体は、九十九里浜のシラサギ類とゴイサギの巨大な集団営巣地にいた一羽ですが、危うくシラサギの仲間として見過ごしてしまうところでした。

 面白いことに、白いクロサギは南方ほど多く、名前通りの黒いクロサギは九州以北に多いといわれています。南西諸島では白砂や白化サンゴ礁を背景に生息し、九州以北では岩礁地帯に生息してきたことに由来するのではないかといわれています。関東地方で、白色型のクロサギを観察できたのはまったく幸運だったのかもしれません。

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 集団で行動することの多いシラサギの仲間と異なり、クロサギは単独行を好み群れでいることはないようです。多くても、せいぜい繁殖期に番でいる状態が観察される程度です。上2枚の画像の様に、海辺の岩礁地帯で海水面近くを低く飛翔しながら移動します。移動中に餌を探すといわれていますが、海水に飛び込んで捕食するといった行動は見たことがありません。黒色型のクロサギといっても、翅の色は真っ黒いというわけではなく、比較的黒い個体で薄墨色をしていますし、若い個体は褐色味があります。飛翔する上の2個体の色あいの違いをご参照ください。

 クロサギの観察では、苦い思い出があります。タイトルとその下の写真は、銚子港の中でも一番太平洋に近い銚子第2漁港付近の防波堤で2009年の11月下旬に撮影したものですが、「進入禁止」違反で補導、警告を受けることになった画像です。この防波堤の先端は太平洋の波を直接受ける位置にあり、漁業組合の関係者としては、密漁防止のためにその途中から進入禁止としてあったのです。このクロサギは、最初防波堤の基部(海から離れた方)にいたのですが、ふわりと海側に飛び立ったものを追いかけて行き、心ならずも禁止地区に入ってしまいました。まだ午前9時前だったでしょうか。そのうち数台のパトカーがサイレンけたたましくやって来て何事かと当惑しているうちに拘束された次第です。当日その奥の海に面したテトラポットの連なる岸にはかなりの密漁者がいたようて、その巻き添えとなりました。撮影機材を抱えた密漁者はいないはずですが、その日一日は警察での取り調べで、他の場所での観察は全て取りやめざるを得ない顛末となりました。毎年11月下旬になると思いだします。後にも先にも警察沙汰になった野鳥観測行はこれきりです。その後「進入禁止」マークには十分留意するようになったことは言うまでもありません。

海辺で黒い大きめの野鳥を見かけたら、国内ではまずくろさぎと思って間違いないでしょう。また海岸でも岩礁地帯で白いサギを見かけたら、クロサギの白色型ではないかと眼を凝らして見て下さい。あまり多くはいないクロサギですが、海岸ではスマートな容姿が印象深い野鳥です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 

       


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