以前ご紹介したオバシギを全体として小さくした感じの旅鳥、コオバシギです。オバシギの生息域が東半球であるのに対して、コオバシギはより生息域が広いのですが、大変に局地的で、生息数もかなり少ないと思われています。繁殖地は、シベリア北部、北アメリカ北部、グリーンランド北部の北極圏。越冬地は、西ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、そして中南米、インドネシアなどの沿海域。国内に春と秋に立ち寄るコオバシギは、シベリア東北端やアラスカ北端で繁殖し、インドネシア、オーソトラリア、ニュージーランドで越冬しているものと思われます。
タイトル写真の個体は冬羽、羽根には黒い羽軸があり、白く縁どられています。下左側は夏羽。顔から胸そして腹部にかけて橙色に染まります。この状態を指して英名のRed Knot(赤いオバシギ)と命名されたのでしょう。オバシギの夏羽は頭部や胸部が赤くなることはなく、背中の羽根の一部に橙色のものが入るだけです。夏羽の状態では、橙色の入り方で、オバシギとコオバシギの相違は一目瞭然となります。
一部の資料では、水田にも生息するとありますが、まだ淡水域では観察できておらず、私の観察は全て河口などの汽水域や干潟や砂浜などの海水域に限られております。上右はアサリをそのまま飲み込もうとしてるところで、丈夫な消化器官で殻を消化するようです。砂地の小動物を中心とした動物食性のようですが、一部の資料では植物の実も餌とするようですが、その場面には出会えておりません。
上左の画像が特徴的なのですが、冬羽では、遠くから見ますと背中の羽がなんとなくぬめったような感じがします。上右は水浴びし、水滴を振り払うコオバシギです。
コオバシギはオバシギの群れに混ざって行動することが多く、いつもその中では少数派です。オバシギがせいぜい数十羽の群れでいることが多いのですから、コオバシギの群れは数羽を超えることはないようです。上は、オバシギと一緒にいるコオバシギです。オバシギと比べると、コオバシギはその名の通り一回り小さくまた、その脚はより黄色味が強く現れているように見えます。
オバシギもコオバシギも双方とも、冬羽では色彩がとても地味なシギです。そして双方とも決して浜辺の野鳥たちの中では多数派となることはありません。オバシギ属は常に浜辺の野鳥の中では少数派、そのなかでもコオバシギは少数派です。浜辺の野鳥の中に、たとえ数羽のコオバシギがいたとしても観察者の注目を惹く機会が大変少ないかもしれません。でもそれだけに、見つけ出せた時の喜びはひとしおです。
注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。