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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第166回オグロシギ

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第166回 2015/10/01
オグロシギ
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オグロシギ

166)オグロシギ 「チドリ目シギ科オグロシギ属」

    英 名:Black-tailed Godwit
    学 名:Limosa limosa
    漢字名:尾黒鷸(鴫)
    大きさ:38.5 cm

 大型の目立つシギですが、飛来数がそれほど多くないせいでしょうか、知名度はオオソリハシシギなどと比べて低いように感じられます。国内には、繁殖期と越冬期の狭間の春と秋にたちよる旅鳥です。繁殖は、ユーラシア大陸中部から北部、越冬はオーストラリアやそれに近い東南アジア南部やインド、アフリカといわれています。国内に立ち寄るオグロシギは、おそらく繁殖は沿海州からカムチャッカ半島北部、越冬はオーストラリアとその北部であろうと考えられます。

 このシギの特徴の一つは、淡水域、汽水域、海水域をほぼ問わず国内では観察されることです。よく似たオオソリハシシギは汽水域や海水域に限って採餌する姿が観察されますが、オグロシギは水のはられた水田の様な淡水域にも降り立って採餌します。タイトル写真は蓮田、下右は水田、一番下は内陸の沼で撮影したものですが、下左は汽水域(谷津干潟)、一番下は海水域(東京湾野鳥公園)でのものです。 

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オグロシギの由来は、尾が黒いことですが、普通に見ていると尾が黒い感じを受けません。羽を閉じた状態では風切羽先端に尾の部分が被われてよく見えないのです。上、左の画像でよく確認できますが、翼を開くと明らかに尾の部分は黒く、尾の付け根、尾筒上部は白く、そのコントラストがよく目立ちます。

普通、よく似たオオソリハシシギとの違いに嘴が直線的なことが指摘されます(オオソリハシシギは上に反っています)。ただそれにたよって区別しようとすると、見る角度によって直線か曲線か分からないこともあり、見方によっては反っているようにも見えることがあります。決定的には、翼を開いた状態で尾が黒いこと(オオソリハシシギは白い)、翼上部に白い帯(翼帯)が目立つこと(オオソリハシシギは翼帯がない)、翼下部が真っ白いこと(オオソリハシシギは複雑な模様が入っている)の3点で、どちらの種類か確認できます。

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上の2つの画像はいずれも幼鳥です。旅鳥は春と秋に日本に立ち寄る鳥たちのことですが、オグロシギは圧倒的に秋の方が観察の機会が多いのです。春の渡りは成鳥だけですので、中継点である国内に立ち止まることなく通過するか極めて短時間の滞在であるのに対して、越冬地へと向かう秋の渡りには幼鳥はかなり多くの頻度で中継点に一旦とどまるからではないかと思われます。相対的に、若い個体が長時間の飛翔能力を獲得するのにはかなりの時間がかかっているのがオグロシギかもしれません。

残念ながら、完全な繁殖羽(夏羽)の個体は撮影できておりません。タイトル写真は比較的夏羽に近い換羽の段階だと思われます。夏羽では、頸の部分だけが橙色に染まります。また、他のシギ同様動物食性ですが、上右の画像は水中でミミズを捕えて飲み込むところです。画像をクリックすると拡大しますので、ご確認ください。水中や砂の中で餌を捕えても、一旦水上に上げてから飲み込むようです。他に、昆虫類や貝類、ゴカイなども餌とするようですが、捕えた餌を飲み込む動作が敏捷でなかなか何を餌として捉えたのか分からないことが多いのです。

芭蕉の鴫をよんだ、秋の句です。

刈あとや早稲かたかたの鴫の声

タイトル写真の下の画像は、稲を刈り取ったあとに水を入れた田に入ったオグロシギです。この句での鴫が、どの種類か分かりませんが、シギの仲間の声は一般的には地味です。秋の深まりを誘う声に聞こえたのでしょう。(一般的に、この句の解釈で落ち穂拾いでもするのか、シギがやって来ていると解釈するようですが、シギは全て動物食です。ここでシギが狙うのは刈り取った後に残った稲株や水の中にいる昆虫や、ミミズです。)

オグロシギは今が観察できるシーズンです。水の入った水田で、浜辺で、眼を凝らして見て下さい。秋の深まりを感じさせるオグロシギの小さな群れが餌をとっているかもしれません。

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 

       


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