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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第162回クロアシアホウドリ

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第162回 2015/5/01
クロアシアホウドリ
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クロアシアホウドリ

162)クロアシアホウドリ 「ミズナギドリ目アホウドリ科アホウドリ属」

    英 名:Black-footed Arbatross
    学 名:Diomedea nigripes
    漢字名:黒足阿呆鳥、黒足信天翁
    大きさ:70 cm

前回ご紹介したコアホウドリの仲間、クロアシアホウドリです。コアホウドリ(80㎝)よりわずかに小さい(70㎝)のですが、翼長(200㎝)は長い(210㎝)のです。全身が黒いこともあってよりほっそりとして、かなりスマートな印象が残ります。趾(あしゆび)を含めた脚全体が黒いのでこの名前が付いているのですが、脚だけでなく体全体も黒く、長い翼を全開にして滑空する姿は精悍さを感じさせます。残念がら、陸に上がって生活するクロアシアホウドリを観察できておりませんので、脚の黒さを画像で紹介することは今回までのところできておりません。

黒いと言っても実際には黒褐色です。若鳥の方が、褐色味が強くでるようです。今回の画像の中では、完全な成鳥は一番下右側の個体だけで、それ以外は幼鳥とは言えませんが、完全成鳥とも言えません。顔の白い部分が広いほど、成長度としては若いといわれています。下の2枚の画像を比べて下さい。右側の個体の方が白い部分が広くなっています。小型の野鳥ですと、完全成鳥となるのに3年程度かかると思われますが、海洋性の大型野鳥は、寿命も長くそれに比例して性成熟にかかる期間も長くなっているようです。クロアシアホウドリの寿命は通常27年以上、40年を超える個体も最近の調査では発見されているようですし、性成熟にかかる期間も8年から10年だといわれています。それからしますと、右側で生後4年程度、左側で生後5,6年程度といったところでしょうか。

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クロアシアホウドリは、アホウドリ、コアホウドリと同様、飛翔の際には羽ばたくことがほとんどなく、比較的に海水面近くを風を受けてグライダー走法とでもいうような、滑空を専らとします。水面すれすれのポイントから、だいたい10~20メートルほどの高さまで上ると体を反転させ、方向の調整をしながら追い風を受けて下降します。タイトル写真と上左の画像は体を反転させた直後で、上右は水面のごく近くを水平に移動しているところです。広大な大海原を、数千キロを移動するためには滑空することが体力を維持しながら移動する最も合理的な方法なのです。 また、意外と滑空速度が早いのは、翼開帳時の翼全体の面積に対して、体重が非常に軽いこと、また風を受ける翼の長さに比べると、その幅が狭いこと、更に尾が短いことがその主な根拠としてあげられています。ある調査での、採餌から次の採餌までの継続飛行時間は41時間、その距離は630キロに及ぶといわれています。それですと、平均時速は15km/時間となり、フルマラソンの距離になおすと1時間30分で、現在のヒトの世界記録2時間2分をはるかにしのぐ速度なのです。

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上の2枚は珍しく水面に浮かんで休息をとっているクロアシアホウドリです。上でも述べましたが、右の個体を拡大画像でご覧ください。嘴基部だけが白く縁どりされています。まさに成鳥です。最近の調査では、小笠原諸島での個体数は数百に及ぶと報告され、また、2013年4月には、伊豆諸島の八丈小島では約30羽が営巣を開始したことが確認されました。そして同年、個体数がふえていることから従来の絶滅危惧種のレベルが準絶滅危惧種(NT)にダウンロードされたようです(IUCN=国際自然保護連合)。絶滅危惧のレベルが下がることは喜ばしいことですが、それは決して放置してよいということではないことは言うまでもありません。

大海原を細く長い翼で滑空する大型の黒い飛鳥、これが太平洋の沖合でいつでも観察できるようにまでなってほしいものです。今回の画像は、全て太平洋沿岸の大洗・苫小牧フェリー航路上から三陸海岸沖合で撮影したものです。太平洋沿岸の船旅を楽しむ機会がおありでしたら、是非デッキに出てアホウドリの仲間を探してみて下さい。今が観察には絶好の季節なのです。

 

 

 

 

 

 

注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 

       


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