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第159回 2015/2/01
アビ
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アビ

159)アビ 「アビ目アビ科アビ属」

    英 名:Red-throated Diver(Loon)
    学 名:Gavia stellata
    漢字名:阿比
    大きさ:63 cm

東北地方以南では、いまではあまりなじみのない海洋性の野鳥アビをご紹介します。繁殖はユーラシと北米大陸の北極圏、国内には冬に沿岸の海洋に越冬にやって来る冬鳥です。もっぱら関東地方より北部、だいたい東北地方から北海道の沿岸部で越冬しますので、内陸部にお住まいの方、中部以南にお住まいの方には縁が薄いかもしれません。いまでは、とことわりを入れたのは、実は30年前までは、瀬戸内海広島県呉市ではこのアビを使ったアビ漁が長く続けられてきたのです。天然記念物に指定されたそのアビ漁も1986年(昭和61年)に終わり、アビ自体の瀬戸内海への飛来もほとんどなくなって来ているようです。アビを使った漁法は、「鳥持網代(とりもちあじろ)」もしくは、「鳥付網代(とりつけあじろ)」と呼ばれ、アビが小魚のイカナゴを追って集まって来るとイカナゴは下に逃げます。海中では、それを狙った大物魚のタイやスズキが寄って来ます。漁師はその大物魚を一本釣りで狙うという魚法だといわれています。漁師は、アビの参集を目指して大物魚を狙えるという次第です。

ただ残念ながら、1980年代には、アビが餌とするイカナゴが減少してしまった(海砂の過剰採取による海底環境の変化が原因といわれでいます)ことに加えて、瀬戸内の船舶の往来(とりわけ高速船)の増大によって、アビがその海域に集まりにくくなったことから、この漁法は江戸時代以来300年間の伝統を終わりにせざるを得なかったようです。

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アビの特徴として、脚がからだのかなり後方にあることから、「あとあし」と呼ぶ地域もあったといわれます。上の写真(茨城県波崎港)左側でご確認ください。白く長い腹部の本当に尾に近い部分に脚があります。 また、上右の写真でお分かりのように趾(あしゆび)の間にはひれがあります。そのことから、「あしひろ」や「あしひれ」と呼ばれたものが、転化してアビと呼ばれるようになったともいわれています。

アビは、アビ属の5種類の野鳥の総称でもあり、また一つの種でもあります。アビ漁で用いられたのは主としてシロエリオオハムだったといわれています。アビ、シロエリオオハムの他にはオオハム、ハシグロアビ、ハシジロアビなどがアビの仲間です。アビ属5種類はそれぞれ大変よく似ていて、かなり良く観察しないとその区別は容易ではありません。

さて下左(千葉県銚子マリーナ)は、アビ漁の主役、シロエリオオハムです。アビ属の中では、国内への飛来数が最も多いのではないかと思われます。アビの羽に入る白い斑が小さく沢山あるのに対して、シロエリオオハムにはそれがほとんどありません。タイトル写真(茨城県波崎港)と比較して見て下さい。

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←シロエリオオハム

→オオハム

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上右の画像は、オオハム(千葉県銚子マリーナ)。シロエリオオハム(65cm)やアビ(63cm)より一回り大きく(72cm)、繁殖地はユーラシア大陸の北部,アラスカ西部だといわれています。国内で通常観察できるアビ属は、この3種類だと思われます(ハシジロアビは、解説書によると北海道沿岸で繁殖するとあります。おそらくシロエリオオハム以上に観察の機会があるはずですが、私の経験が足りないせいで、本種には今のところお目にかかることができていません)。残念ながら、国内の沿岸で観察できるのはこれら三種とも、越冬期間中に限られるために冬羽ばかりで、繁殖羽にはなかなかお目にかかれません。 下2枚は、たまたまオオハムと思われる繁殖羽をした個体を太平洋岸で船上から5月の連休中に観察できたものです。

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繁殖羽では、頭部から頸が一様に綺麗な灰色で、前頸の部分に緑色です。かなりの遠距離からの観察ではっきりとは確認できませんが。この前頸部がアビでは赤褐色、シロエリオオハムでは紫色になるといわれていますが、実際には観察できておりません。また、繁殖羽では背中の白い模様もはっきりと現れます。オオハムの上部には上右の写真でお分かりのように明瞭な白斑が入ります。他方、アビにはその白斑が非常に小さく距離を置くとほとんど分からない程度、またシロエリオオハムは、オオハムと類似した明瞭な白斑が入るといわれています。

カナダの国鳥は、Loon=アビだと長い間思っていました。モントリオールやトロントの土産物店でもLoonの飾り物を多く見かけましたし、切手にもアビの仲間(ハシグロアビ)が採用されているからです。今回改めて調べてみると、どうも、実際にはカナダは国の鳥を決めていないというのが真相のようです。ただ間違いなく、カナダではアビ属の鳥たちが繁殖している様子を観察できることは間違いありませんが。

アビの仲間たちの中で最も小さいのがアビ。それでもカルガモより大きいのです。海に浮かぶ黒っぽくカモより大きめの水鳥を、冬から春先の波間で見かけたら、それがアビの仲間である可能性は高いといえます。機会さえあれば、おおきな海鳥アビとその仲間たちにこの春までには再会できることを期待しています。

 

 

 

 

 

注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 

       


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