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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第148回ツルシギ

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第148回 2014/3/01
ツルシギ
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ツルシギ

148)ツルシギ 「チドリ目シギ科クサシギ属」

    英 名:Spotted Redshank
    学 名:Tringa erythropus
    漢字名:鶴鷸(鴫)
    大きさ:30cm

 

 

夏と冬で全く羽の装いの異なるシギ、ツルシギをご紹介します。ユーラシア大陸の寒帯や北極圏で繁殖し、東側ではインド、東南アジアで越冬、西側ではアフリカ大陸中部、地中海沿岸、中近東で越冬するといわれ、日本にはその渡りの中間、春と秋に立ち寄る旅鳥だとされています。しかし、私の観察では、ここ3年間は毎冬群馬県多々良沼で2,3羽を見かけていますし、情報では渡良瀬遊水地にも数羽がこの冬には越冬しているといわれています。まだほんの少数ですので、何とも言えませんが、地球温暖化との関連で国内での越冬が始まったのであれば、今後その数は徐々に増えて行くのかもしれません。

ツルシギは嘴と脚がともに赤く、体の大きさと比較してそれぞれが長いのが特徴です。そのことからツルと冠されたのだと思われます。英名でもRedshankと付けられ、赤い脚が注目されています(shankとはすねや脚を意味します)。夏の繁殖羽では、タイトル写真(茨城県浮島にて撮影)の様に、全身すすけた黒、頭部から頸、前胸にかけては墨色でそれ以外の部分では黒地に羽根の縁が白いのが目立ちます。アイラインは白く、繁殖羽では頭部が黒いので実によく目立ちます。国内で観察する限り、黒いシギの仲間は他にいませんので、繁殖羽ではツルシギの確認は実に容易です。また、湖沼や田圃などの淡水系でしか見かけませんので、淡水系のシギだともいえます。

繁殖活動を終えて冬羽になりますと実に地味な感じのシギへと変身します。全身は灰褐色、黒褐色の斑が入りますが、繁殖羽の様な際立った色合いではないために、体の色だけですと他のシギと区別できません。下左側の写真(群馬県多々良沼にて撮影)を参照ください。この時期には長い嘴と脚が赤いことが見分ける第一のポイントとなります。脚も嘴も、成鳥ほど真紅に近く、幼鳥では柿色をしています。また、幼鳥は下右の写真(茨城県浮島にて撮影)を参考にしていただければ分かりますが、全体に褐色味が多いこと、体下面に灰褐色の縦横の斑が入ります(成鳥冬羽では腹部は真っ白です)

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鴫の仲間は、ほぼすべて水辺で餌を採りますが、比較的よく水に入り、時として体までも水没させる種類と、もっぱら水辺の砂地にこだわって採餌活動をし、あまり水の深いところには行かない種類があります。このツルシギは、典型的な前者のタイプで、深い水でも厭うことなく積極的に移動し、採餌の際の行動はかなり早く、水を切って移動する様はダイナミックな感じを与えます。

面白いことに、このツルシギは雌雄で営巣し、メスが一旦卵を産むとメスは巣を離れしまいます。その後はオスだけが抱卵し、育雛するといわれています。これは国内で見かけるタマシギと同じ特徴です。タマシギの場合、一婦多夫型の雌雄関係でメスは複数のオスと交尾しますが、ツルシギにそれと同じ習性があるのかどうかは今のところ不明です。タマシギは国内で繁殖するので、その生態がよく観察報告されていますが、ツルシギは国内では繁殖した例を聞いたことがないのです。推測ですが、タマシギは明らかにメスの方が色彩豊かで、雌雄の羽の色の違いが実に明確ですが、ツルシギは雌雄同色だとされています。その事実からしますと、繁殖活動は複数のオスを積極的に求めるようには思えませんが、事実はどうなのでしょうか。

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←夏羽

→冬羽

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  • このツルシギに良く似ているのがアカアシシギです。ツルシギの方が、一回り大きく、脚も嘴も長いのですが、2種が同じ場所にいることままずないので、見分けるポイントを知っておくことが必要です。ツルシギの嘴は下嘴基部だけが赤いのに対して、アカアシシギは上下の嘴基部がともに赤いのです。残念ながら、どこにでもいるシギの仲間ではありません。もし、静かで比較的大きめな沼や水辺に遠浅の泥状の岸辺のある湖、水を張った田圃に行かれる機会がありましたら、晩秋から初夏にかけては黒い羽と体をしたシギを、また春や秋ですと嘴と脚の長いシギを探して見て下さい。それがツルシギである可能性は十分ありますので。一度見たら忘れられない、印象深いシギです。

 

(注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 



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