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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第139回コリンウズラ

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第139回 2013/6/01
コリンウズラ
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コリンウズラ

138)コリンウズラ 「キジ目ナンベイウズラ科」

    英 名:Bobwhite Quail
    学 名:Colinus virginianus
    漢字名:
    大きさ:20cm

テーマのコリンウズラについて述べる前に、国内のウズラについて説明いたします。

万葉の時代から人々に親しまれてきたウズラですが、昨今では、スーパーで販売される鶏卵を相当に小さくした、「ウズラの卵」としてしか意識されていない、名前だけの野鳥になり下がった感があります。愛知県豊橋市での養殖が国内の7割ほどを占めるとか。商業的な人工繁殖自体が地域限定されていますので、ますます野鳥ウズラとしての存在は人々の意識からは遠くなっていっているようです。ウズラは、キジ科の野鳥の中では最小で、シルエットの似通ったコジュケイよりもふた回りほど小さい感じを受けます(さらに小さい、沖縄地方に生息するミフウズラは、ミフウズラ科です)。

環境省鳥類標識調査の結果として、北海道・青森で繁殖したものは、関東、東海、紀伊、四国などの太平洋沿岸の温暖な地域で越冬するものが多く、朝鮮半島で繁殖したものが九州、東海、関東などにも飛来してきていると報告されています。その意味で渡り鳥といってよいのです。繁殖地は北海道、東北では平地、関東以南では高原だとされています。

さて、今回、ここでご紹介するのは日本を中心とした東アジアに生息するウズラではなく、アメリカ中東部やメキシコを原産とするコリンウズラについてです。日本鳥類目録第7版のキジ目の欄にも記載がありません。

最近(2013年5月中旬)、埼玉県深谷市の利根川河川敷の畑でコリンウズラの家族を見かけました。タイトル写真は母ウズラと連れ添ったかなり大きくなった雛ウズラです。また下は、真っ白な顔に太く黒い過眼線が目立つ父ウズラです。見かけた最初は、若いキジかと思い、その後ウズラだといったん判断したのです。しかし、このオスの派手さがどうしても気になって、色々と海外の文献を含めて調べてみました。その結果、これはウズラではなくコリンウズラであるとの確証を得た次第です。

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ウズラはキジと同様に、交尾後のメスの育雛活動にオスがかかわることは一切ないといわれています。ところが今回のこの派手なウズラは、一組の母ウズラと雛からあまり離れていない場所にいたのです。これは家族であり、少なくともある時期まで育雛にオスがかかわっていると思われ、生態的にウズラとは異なるのです。

コリンウズラはアメリカ中東部、メキシコが生息地です。関係者が積極的に輸出をすすめているようで、日本以外にも英国、ニュージーランド、一部の中南米でも生息が確認されているようです。我が国にも、狩猟目的や飼育用に輸入されたものが野生化しているようで、関東地方では神奈川県の相模川流域で観察されているようです(他には大阪地区)。埼玉県下での観察は、今回が初めてかもしれません。鉱工業製品の貿易の自由化には何の異論もありませんが、生物の輸出入について我が国の政府はあまりにも安易に考えすぎているのではないかと思えます。生物は、大変狭い環境の中で適応しながら生活しています。その環境が異生物の混入によって大きく損なわれる危険性があるのです。物の移動と、生き物の移動とは決して同次元で論ずるべきものではないのです。

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上の写真はメスですが、ウズラというよりもコジュケイを思わせる羽の模様をしています。下はかなり大きくなった雛です。左側の胸に白斑があり、眼の周囲が黒い個体はメスではないでしょうか。また栽培していた苺を食べていた、喉もとが白く、白い眉線が現れかかっている右側の個体はオスではないかと推測しています(コリンウズラの若鳥の雌雄についての文献には出会えていないのです)。

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またウズラの話に戻ります。鳥獣保護法では、狩猟鳥獣に指定されているウズラですが、これまでは2007年以降一時的に狩猟禁止対象と指定されていました。環境省は昨年8月に公表されたレッドリスト改訂版で絶滅危惧Ⅱ類に指定し、さらに本年5月15日それを「希少鳥獣」に指定することを正式に決定しました。これで、狩猟対象とされることはなさそうですが、自然回復が可能な限度を超えてしまっているかもしれません。

では、そうした危機的な状態にあるウズラに対して、このコリンウズラに、どのように行政は対応するのでしょうか。ウズラは比較的に山間部に生息しますので、乾いた河川敷に生息するコリンウズラとは競合することはなさそうです。しかし、コリンウズラの生息する環境は、キジの生息環境と重なります。餌もほぼ同じだといえるでしょう。とても魅力的なコリンウズラですが、直ちに輸入を禁止すべきだと思われます(今現在、輸入が許可され続けているかどうか分かっておりません)。大変魅力的なコリンウズラの家族を観察できたのは実に幸運でしたし、嬉しい興奮を与えてもらえましたが、この風景がさらに拡大することには必ずしも肯定できないのです。まさか、ウズラの絶滅危惧の名目でそれに代わってコリンウズラの輸入を促進するような愚策だけは採らないことを信じていますが。

 

 

 

 

(注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 



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