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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第132回ヨシガモ
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第132回 2012/11/06
ヨシガモ
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ヨシガモ

131)ヨシガモ 「カモ目カモ科マガモ属」

    英 名:Falcated duck
    学 名:Anas falcata
    漢字名:葭鴨、葦鴨
    大きさ:♂54cm, ♀48cm

野鳥観察を趣味とするヒト(バーダー)が、初めて見る野鳥の種類をライファー(Lifer)といいます。また、何種類の野鳥を観察できたかという記録をライフリスト(Life List)といいます。たとえば、「今日見た、ヨシガモは私のライファーで、ライフリスト100番だ」といった具合です。ただライファーやライフリストがたとえば、両生類や昆虫類にも適用可能な英語であるのかどうかは知りません。さて、私にとってヨシガモがライファーであったのは、1970年代末の国立武蔵丘陵森林公園(埼玉県比企郡滑川町)の木に囲まれた小さい池でした。ライフリストでは100番未満だったでしょう。冬に入って間もない夕刻、山道から10mほど下がった林の中に小さい池がありました。さほど期待はせずに降りてみました。

夕日が葉を落とした木立の中に差し込み、小さな池の中心部に、実に鮮やかに金属光沢を帯びた緑色に輝く頭部をもった幻想的なカモが、1羽だけ夕日を反射する水面に浮かび上がったのです。あまりの美しさに時を忘れて見入ったものでした。それがヨシガモ(オス)との最初の出会いでした。

ヨシガモは、国内で越冬するカモの中では比較的数が少ない種類です。最初に見たのは、山の中の池ですが、その後の観察場所は、淡水系、海水系、汽水系の全てで見かけております。これまでの経験では、淡水系で見かけたことが一番多かったように記憶しています。

食性上では、専ら植物食といわれており、水生植物、種子そして海藻などを餌とするようです。ただ、繁殖は湖沼周辺の淡水域といわれています。繁殖地は、日本より緯度的に高い中国、朝鮮半島各地で、北海道でも繁殖しているようです。越冬地は、日本から東南アジア各地、さらにはインドまで。東アジアのカモといえます。ヨーロッパやアメリカ大陸にはいないカモです。

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ヨシガモの雌雄は、他の多くのカモと同じように、かなり異なっています。上左がオス、上右がメスです。メスが実に地味なのがお分かりでしょう。ただ共通点があるのがお分かりでしょうか。実は、翼鏡と呼ばれる次列風切羽先端部が雌雄ともに緑色で、嘴がともに黒です。鴨の仲間では、翼鏡や嘴の色が雌雄で異なっている種類もいますので、観察上のチェックポイントでもあります。

ヨシガモのメスはご覧のようにとても地味な色彩ですが、翼鏡が緑であること、嘴が黒いこと、頭部が丸く、中には上右写真の個体のように頭頂部が平らに見えるものもあることが特徴です。ただ他のカモのメスと異なるのは、胸部から背中にかけて大きな鱗模様があることです。このような模様が大きくはっきりと入ったカモのメスは、このヨシガモだけです。

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上の写真は、ともにヨシガモのオスです。この写真で、ヨシガモオスが、ナポレオンハットのカモと呼ばれる理由がお分かり頂けると思います。このカモの頭の幅はかなり細く、また後頭部の羽毛が伸びてきれいな冠羽となり、後頭部に張り出しているのです。全体として金属光沢のある緑色の頭部の中で、嘴基部から頭央部、後頭部が茶色のバンドを形成し喉元の白と綺麗なコントラストをなしています。喉の白い部分と頸の間には、まるで首羽のように緑色(光線によっては黒く見えます)バンドがあります。羽の後部が垂れ下がっているのは、三列風切羽が長く伸びた結果で、尾ではありません。この羽の垂れ下がった部分に着目したと思われます別名が、「ミノガモ」です。雨の中で着る蓑(みの)にそういえばなぞらえても不思議ではないようです。上の写真でお分かりのように尾は短いながらも別にあります。

ヨシガモは、そう多くはないといっても、全くの希少種というわけではありません。これから次第に国内で越冬するカモたちが増えてきます。綺麗なオスはどなたでも見分けることが容易ですが、内海の堤防の側や、湖沼のコガモの群れの中にひょっとするとヨシガモのメスが紛れ込んでいるかもしれません。どうか探してみてください。

 

(注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 



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