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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第124回ガビチョウ
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第124回 2012/3/01
ガビチョウ

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ガビチョウ

122)ガビチョウ 「スズメ目チメドリ科ガビチョウ属」

    英 名:Laughing thrushes(Hamei)
    学 名:Garrulax canorus
    漢字名:画眉鳥
    大きさ:22cm

特定外来生物に指定されているガビチョウをご紹介しましょう。奇妙に聞こえる和名ですが、これはこの鳥の中国名、画眉鳥をそのまま日本語読みしたものです。台湾、香港、中国南部から東南アジア北部にかけて生息している、チメドリ科の野鳥で、実に大きな声で囀る一方、頭部は明るい茶色で眼は大変目立つ太い白で縁どられ、その白が眼の後方に長く伸びています。声といい、顔の色合いといい目立つ野鳥で、奥ゆかしさとは真逆の南国の野性味あふれる感じの野鳥です。

普通、日本の野鳥と題された野鳥図鑑には掲載されていないことが多く、そのため、見かけた方々が、ネット上の様々な野鳥質問コーナーで尋ねることも多いようです。図鑑編集者としては、近年になってからの外来種であるために、あえて監修しないのでしょう。野外での観察記録は1980年代に九州で、1990年代に関東で観察されて以来、次第に人目につくことが多くなっているようです。いわゆる、かご脱け種が次第に自然増殖したといわれていますが、私はそうは考えておりません。といいますのも、数はきわめて少ないとはいえ、すでに江戸時代から観賞鳥として紹介されているからです。

ガビチョウの輸入は1970年代に飼い鳥ブームにのって急増したようです。香港の公園では、時折ガビチョウを竹かごにいれその囀りを磨かせようと飼養者が色々と工夫している光景にであいます(たとえば鳴き声を競わせるなど)。中国の人々にとってはガビチョウの囀りが心地よく聞こえるのです。ところが、日本ではこの大きい声が多くの人にとって騒音としてしか聞こえず、人気が上がらず、ペット業界は輸入をやめ、既に輸入してしまったガビチョウを遺棄(放鳥)してしまったようです。おそらくその数は数百ではなく、間違いなく数千にのぼり(数万羽かもしれません)、放鳥したペット業者も大都市圏を中心に日本全土に及んでいるものと思われます。

このブームで国内に輸入された世界各国の鳥のうち、本当の意味でかご抜けで自然界で見かけられるようになった呼べるのは、セキセイインコとワカケホンセイインコぐらいだと思われます。同じく特定外来種に指定されている、ソウシチョウも、色彩の鮮やかさの割に飼養者側での人気がでず、採算に乗らない輸入種として放鳥されたと思われます。偶然的な要素で逃げ出したにしては、ガビチョウの国内での繁殖範囲が広すぎるのです。ガビチョウが環境に及ぼす被害があるとすれば、それはあくまで人為的な原因だということをまず指摘したいのです。

あらゆる外来種の新しい環境への移入は、どのような意味においてもそれまでの環境に変化をもたらします。外来種の移入については、本質的には全て規制すべきであると考えています。環境庁によれば、「ガビチョウの被害」として、「里山的森林において、最優先種となり、群集構造が著しく変化している。また、長期的には在来種への直接・間接の負の影響も懸念される」としています。またハワイでは「(密集的な増大によって)在来種類の衰退の一因となっている」ことが挙げられています。つまり、国内においては今現在は増えてているが、具体的な負の影響は出ていない、ただしハワイの先例からすると他の野鳥の生息を脅かしかねないという認識のようです。

また、日本生態学会の発表した、「日本の侵略的外来種ワースト100」にもリストアップされているガビチョウの被害として、「穀物など植物の食害と大音響のさえずりが問題視される」と記載されています。私の浅学のせいでしょうか、ガビチョウは基本的に地上採餌を専らとし、ヒトの口に入る穀物を餌とする記録を見たことはありませんし、目撃したこともありません。また、囀りの大きさは、中国では美声と聞こえるのですから、被害と呼ぶのは大げさすぎます。ここでは、無理矢理に悪者にされている感があります。

結論的に、ガビチョウはその繁殖能力が高いゆえに、今後の環境への影響は大きいことが予想され、「特定」的に移入を禁止し、その増大に手を貸すことはしない政策には賛成です。ただ国内のガビチョウを駆除し、絶滅へ向けた運動があるとすれば、この原因を作った人的な要因をもっと深く掘り下げ反省することから始めるべきだと思うのです。さらに言えば、国鳥としているキジに始まり、常識的に希少種として扱うべきエゾライチョウやヤマドリ、ヤマシギを狩猟対象鳥獣にしたままにしている法令をも見直すべきです。

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さてこのガビチョウ、上の写真のように地上で採餌することが多く、藪や低木林などを住処とします。時折囀る際に、木立の上の方の梢やアシの茂みなどの高い部分などにとまることがありますが、多くは低い茂みに潜んでいますので日陰の鳥といった印象があります。採餌の特徴から、降雪量の多い地方での繁殖はない、もしくはそうした地方への進出はないものと考えられてきたようですが、最近では雪の中で採餌する姿も観察されていますので、必ずしも雪が生息制限となっているようには思えません。寒い環境にも対応してきているのかもしれません。

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どうも、イソヒヨドリのように雌雄ともどもに囀るようで、オスと思われる個体の囀りにあたかも応えるかのようにメスと思しき個体が姿を見せないまま囀り返す場面に遭遇したことがあります。普通の囀りは、クロツグミに似た声ですが、他の鳥の鳴き真似も上手です。ウグイスのホーホケキョも上手です。他に、シジュウカラ、キビタキ、サンコウチョウそしてセミのツクツクボウシの声を真似ることも報告されています。私は、ウグイス以外には、オオルリの声ですっかり騙されたことがあります。「ガビチョウの鳴き真似」で検索されれば、多くの事例を耳にすることができます。これだけ個体数が増えてきますと、里山で、季節外れの野鳥の囀りや、あまりにもヒトの耳に特徴的な声での野鳥の囀りを耳にしたら、まずガビチョウを疑うことも必要かもしれません。その意味で、ガビチョウは囀りの名人なのです。

埼玉県下では、野鳥観察地の多くでガビチョウを見かけております。さいたま市秋ヶ瀬公園、北本市北本自然公園、川島町鳥羽井沼自然公園、飯能市天覧山、吉見町八丁湖公園といったところですが、生息は、埼玉県のほぼ全域に渡っているといってよいと思われます。ヒトによって南国で大量に買い付けられ、遠く日本に持ち込まれ、そして放棄されたガビチョウ。ヒトのわがままさと生き物の生命力の強さをこのガビチョウに感じるのです。

(注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 



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