今年の夏、東京葛西臨海公園に久しぶりにやってきた(前回は2009年)、アカガシラサギです。本来、中国中東部で繁殖し、越冬期には東南アジアに南下するといわれています。他方、香港を含む華南地方では、一年中生息しています。英名のChineseは、繁殖、周年生息地が中国であることからつけられています。1970年以前は、国内では大変まれな迷鳥扱いでしたが、1970年代から次第に日本各地で観測されるようになり、一部繁殖も確認されています。
繁殖羽(夏羽)では、和名の通り頭部と首周りは赤褐色。タイトル写真は葛西臨海公園に本年(2011年)きた個体ですが、まだ若い個体(幼鳥)で頭部に本来ふさふさと生える冠羽や後頭部の飾羽を観ることができません。嘴は黄色く、最先端部分が黒くなっています。背中は濃い灰色をしています。学名のBacchusは、ギリシャ神話の酒の神バッカスからつけられたもので、頭部の赤を赤ワインの色に見たてたものだといわれています。
これが冬羽ともなりますと、色彩は一挙にあせ、頭部と首周りには黄褐色の縦斑が多く入り、背中は褐色味の強い灰色となります。また、上嘴は全体として黒くなります。下は、香港・米埔環境保護区で見た冬羽のアガガシラサギです。
アカガシラサギの特徴は、夏羽であると冬羽であるとを問わず、羽と下腹部そして尾の部分が真っ白であることです。地上の降りて餌を探しているときには色彩が目につくのですが、いったん飛翔しますと実に白い翼と下腹部がよく目立ちます。下は、香港カオルーン地区の九龍公園の上空を飛んでいたアカガシラサギです。
さて、下は夏に葛西臨海公園にやってきたアカガシラサギが次第に冬羽に変化している状態です。赤味は薄れ褐色味が強くなってきていますし、上嘴は黒く変化しています。また、やってきたときには見られなかった縦斑が次第に明瞭になってきています。
コサギより一回り小さいアカガシラサギです。国内の観察報告からは、明らかに生息域が広がっているようです。かつては、南西諸島で冬にしか観察できなかったのですが、東京都、神奈川県、埼玉県などの首都圏でも毎年少ない個体数ではありますが見かけられています。本来の繁殖地の環境が悪くなったために生息地を広げているのではないことを祈るばかりです。
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