そろそろ、越冬していたカモ達の最後のグループも繁殖地であるユーラシア大陸北部へと渡る頃です。汽水域、海水域、淡水域のいずれでも越冬しますし、川などの流水系でも沼などの滞水系ででも見ることができます。オナガガモとともに、比較的ヒトの与える餌にも平気でアプローチしてくるお馴染みのカモといえます。
食性は植物食で、潜ることができません。ですから深い湖や海では、比較的岸辺近くに寄って採餌しています。ただ、オオハクチョウやコハクチョウが越冬する湖や沼では事情が異なり、ハクチョウたちが食べ残した葉や茎、種などが浮かんでいるのを漁りに比較的に水深のある岸から離れた場所まで出かけることもあります。
オスは、嘴基部の上部から頭央にかけて目立つ薄黄色(クリーム色)の部分があり、その周辺の濃い褐色とコントラストをつくっています。ヒトでいうと眉間に当たる部分がこれほど目立つカモは他にいません。この部分だけで、他のカモと見間違うことはないでしょう。
カモのオスは、繁殖が終わる時期に換羽し、ほとんどメスと変わらない羽の模様、色になります。この状態から繁殖羽になるまでのオスの状態をエクリプスと呼びます。エクリプスとメスの見分け方は、顔や背中の羽の色ではできませんので、繁殖羽の状態で雌雄の区別を、それ以外の部分で見極めておく必要があります。ヒドリガモの場合、普段見えませんが雨覆羽がメスは濃い茶褐色であるのに対しオスは白いのです。上の左側の写真で、羽と動体の部分の境界に白いラインが見えます。これがエクリプス初期の状態の見分けるポイントとなります。その後次第に眉間のクリーム色が出てくるようになり、最終的には上の写真の右側の完全繁殖羽となります。タイトル写真のオスは、90%換羽を終えた状態です。比較ください。
さて、このヒドリガモ、アメリカには、よく似たアメリカヒドリがいます。アメリカヒドリは、下の写真のように顔は褐色ではなく黒っぽい斑が多く入る灰色で、何よりも目の周りとその後方に緑色の巴状の部分が特徴です。眉間のクリーム色は、ヒドリガモと比べてかなり白っぽくなります。毎冬、ヒドリガモの越冬地にごく少数が迷い込んで来ます。下腹部は薄い褐色で、ヒドリガモの白い下腹部とは異なっています。
日本に迷い込むアメリカヒドリは、おそらくアラスカ西部、またはユーラシア頭部の極東地区で越冬しているものと思われます。そこではヒドリガモも越冬しますので、交雑個体が生まれる環境があると思われます。
下の写真は、眼後方の緑色の斑があることは、アメリカヒドリの特徴を示していますが、額のクリーム色と頸と顔の褐色はヒドリガモの特徴を示している、典型的な交雑個体(ハイブリッドともいいます)です。
毎冬どこかのヒドリガモの観察地でアメリカヒドリまたは、そのハイブリtt個体が観察されています。この冬はどこで見つかるのかが楽しみでもあります。一緒に探してみませんか。
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