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第27回 2004/09/01
偉大な、アマチュア科学者たち
27

書名:偉大な、アマチュア科学者たち
著者:ジョン・マローン
翻訳:石原薫
出版社:主婦の友社
出版年月日:2004年6月20日
ISBN:4−07−238724−X
価格:1500円(税別)
http://www2.shufunotomo.co.jp/webmado/detail.php3?isbn=4-07-238724-X

10名の、このタイトル通り「偉大な、アマチュア科学者たち」を簡明に解説してくれます。ここで言うアマチュアとは様々な意味合いをもっています。その意味合いを区分すればこの本全体が明確になります。

まず第一に、近来、その名前がその業績によって広く知られながら、実は当人の「本業」はその分野とはまったく関係のなかった科学者。第1章の、グレゴール・ヨハン・メンデル(「遺伝学の父」1822〜1884)がそれにあたります。この逆に、当人は「本業」で著名人となっているものの、その陰でなした賞賛すべき成果を挙げている科学者。第8章のトーマス・ジファーソン(「近代考古学の先駆者」1743〜1826)。また、第7章、アーサー・C・クラーク(「通信衛星の発案者」)もニュアンスは違いますがこの同類といってよいでしょう。この3名は本来のプロフェッショナルとしての仕事以外の部門において、近代科学の発展に、その分野においては「アマチュア」ではありながら、ある分野では多大な寄与を成し遂げた人物として評価されています。

さて第二分類として、最終的に成し遂げた成果を基礎付けるべき専門教育機関(大学、大学院等の高度教育機関)を経ることなく、自分の興味に導かれるまま、その分野においてはそうした教育機関を経てきた先達や同世代の科学者を凌駕するほどの成果を挙げた科学者。専門的な、公的権威を持つ教育機関を体験していないという意味でのアマチュア科学者。第2章デイビット・H・レビー(「彗星ハンバー」20世紀)、マイケル・ファラデー(「電磁法則の生みの親」1791〜1867)、第6章グロート・リーバー(「電波天文学の父」)そして、第9章スーザン・ヘンドリクソン(「恐竜ハンター」)。

そして第三に、本来その功績によって、専門分野の科学者として、例えば現在にあってはノーベル科学賞に値するほどの業績を残しながら、その時代と環境がそのように本人とその学問的価値を認めることのなかった科学者。第3章ヘンリエッタ・スワン・リービット(「セファイド変光星の“解読者”」)と第10章フェリックス・デレル(「バクテリオファージの発見者」1873〜1949)がこれにあたるでしょう。

第四に、例えばレオナルド・ダ・ヴィンチのように、その取り扱い、発明、発見した分野があまりに多岐に渡るため、ある特定分野の先駆者としては定まった名声を確立することなく、ここの分野においてのみ専門家の一部が評価するが全体としては「アマチュア」扱いされ今に至っている科学者。第4章、ジョセフ・プリーストリ(「酸素の発見者」1733〜1804)の世界と成果の広さにはびっくりさせられます。

18世紀以降の科学の歴史上、あまり評価されなかった、以上のような意味での「アマチュア科学者達」を筆者は豊富な見識に基づいて判りやすく解説しています。合計10編からなる科学者の個々の業績を今日から見たときの評価が浮き彫りにされています。また、その人たちを取り囲んだ環境、同時代の科学者たちの協力や、中傷も含めた社会が垣間見えます。科学の発達には、決して権威付けられた教育、学問機関にとらわれない自由な発想と自分なりの努力、そして社会環境が互いに関連しあっていることを丁寧に教えてくれる書物です。