エナガ:日本に生息する野鳥の中でも、最も愛くるしい姿、形、色彩、動作を示す、スズメよりずっと小さく見える留鳥です。尾を含めた大きさが14cm、そのうち尾の部分が7,8cmはありますので、どれくらい小さいかお分かりになることと思います。この長い尾を柄杓(ひしゃく)の柄(え)に見立ててこの名前が付いたようです(別名「えびしゃく」、「をながひしゃく」、または「えながどり」とも呼ばれたようです)。体重8グラム程度といわれている、雌雄同色の野鳥で、身体全体が丸く、フワフワとした羽毛に包まれ、まるで白と黒の混ざり合ったマシュマロのようです。
英語名のLong-Tailed Titも尾の長さを表現したものです。また中国語名の銀喉長尾山雀(中国野生動物協会編集・中国野鳥図鑑)も同様で、体の半分若しくはそれ以上を占める長い尾がどの世界の人たちにも印象深いようです。
毎年来る冬ですが、微細な気象条件は年毎に変化しています。それと同じように、野鳥の出現する個体数も変化しています。昨年(2007年)の冬、あれほど平地に降りてきたウソが今年(2008年)はまったくといっていいほど影を潜めています。その代わりに、今年はこのエナガがこれまでの冬以上に平地で観測されているようです。2008年はエナガの年でしょうか。
広くユーラシア大陸から日本列島に分布します。しかしどうも北海道では観察されていないようです(北海道にはよくにていますが、眉線のない、顔が真っ白な「シマエナガ」が生息しています)。 繁殖期の春先から夏以外には、数羽から数十羽の群れを作り集団で動き回ります。時として、他の野鳥、メジロ、シジュウカラ、コゲラ、ヤマガラなどとも混成の群れを作ります。
動きが素早いため、見落とされることが多いのですが、樹木の多い都市部の公園などでも見かけることができます。樹上にいて、一箇所にほとんどとどまることなく動き回ります。撮影者泣かせの野鳥ナンバーワンのグループに属するともいえるでしょう。
小さな声で「チーチーチー・ジュリジュリ」と聞こえる地鳴きを繰り返しますが、大きな群れの場合にはそれが良く聞こえ、数十メートル先からでも、その音が近づいてきますとまもなくやって来るなと期待させられます。冬の鳥と思っていらっしゃる方も多いのですが、さほど移動する範囲が広くない留鳥です。冬場は落葉樹が葉を落とし、見分けやすいためと、非繁殖期で集団化し、人目につき易いからでしょう。
下の左の写真でお分かりの通り、嘴が短く、丸い眼の過眼線が太い黒です。またその過眼線が、右の写真で確認できますように後頭部でつながっています。普段は、樹上で小さい昆虫やその卵を採りますが、この写真のように地上に降り立ち、穀類を探すこともある、雑食性です。
頭部、腹部は白。そして長い尾。このコントラストが、せわしない動作とあいまってかわいらしい印象を人に与えています。よく知られてことですが、ボール状の巣は、基本がコケで、それにガの繭をほぐした糸やクモの糸で補強し、おそらく卵と雛の保温のためでしょう、柔らかい羽毛やウサギの毛を敷き詰めます。また最近の観察では、雌雄の親鳥以外にも、ペアリングや巣作り、育雛に失敗した個体が、ヘルパーとして育雛活動に参加するようです。
冬に見かけられることが多いのですが、エナガは夏、または秋の季語です。ネット上の「俳句の季語の中の野鳥」では三夏、また「俳句の鳥・虫図鑑」(成美味堂出版、復本一郎監修)でも同様に夏とされていますが、他方「俳句の鳥」(創元社、辻桃子監修)では秋とされています。季節感としては盛夏を過ぎた頃といったところでしょうか。
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意外と人の多い公園などでも見かけることがあります。小さい声で「チーチー、ジュリジュリ」と聞こえることがありましたら、周囲の木立を良く見回してください。数羽のエナガが細い枝にぶら下がったり、別の枝にジャンプしたりするサーカス芸が見えるかもしれません。