第41回 2005/4/01 |
クロジ |
皆さんにはあまりなじみのない鳥かもしれません。ホオジロの仲間は、古来シトドといわれましたが、このシトドの仲間で、全体が黒っぽいのでクロシトド、それが詰まってクロジと命名されたようです。同じように、黄色味の鮮やかなアオジは以前ご紹介しました。アカジという名の鳥はいませんので念のために。 このスズメ大の地味な色立ちのクロジ、生息場所も藪や木立の日陰にいることが多いようで、中々容易にその姿を見せてくれません。木の小枝から小枝にすばやく飛び回ったかと思うと、枯葉の積もった地面にスーと降り立ち、落ちた葉の裏側に潜んでいるであろう虫を探したりします。 私がいつも訪問するさいたま市見沼田圃には、見沼代用水の東縁を取り巻く傾斜林に、大体 5月の連休明けに約1週間ほど滞在してくれます。地声はアオジより小さめの音量ですが、音質的には実によく似ています。「チッ、チッ、チッ」とひと声を連続させます。タイトル写真は、オス。下の写真はメスです。メスはご覧のように全身に茶色味が濃く、下嘴から頬を下から輪郭するような白っぽい線が現れます。嘴の上部は黒、下部が赤っぽいのは雌雄共通です。 他のホオジロの仲間との大きな違いは、尾の両側の白い部分がないことです。一緒にいるところを中々目撃できませんが、アオジよりも大きいことも特徴でしょうか。住んでいる場所は意外と類似していますが、あまり木立の高い場所にいるところを見かけませんし、アオジより頻繁に地面に降りるように感じられます。 このクロジ、日本固有種といってもよいくらい生息域は狭く、南は沖縄まで、北は北海道、サハリン、南千島(国後島、択捉島)、さらにはカムチャッカ南部までとされています。(北海道の情報は、亜璃西社版『北海道・野鳥図鑑』によるものです)北海道では夏鳥、本州以南では漂鳥または冬鳥。繁殖期である6月には、亜高山帯に生息するようです。残念ながら、埼玉県下での繁殖例は聞いておりません。 クロジの囀りと地鳴きの双方を紹介しているサイトがありました。 残念なことに、私の所持する資料ではこの野鳥は季語には選ばれていません。また、詩歌にもクロジとしては歌われておりません。恐らく、なかなか人目に付かない場所を生息域としているからでしょうか。山などに出かけられたら、藪や低く密集した樹木の地面をよく観察してみてください。もしスズメよりちょっと大き目の、黒っぽい鳥を見かけることができたら、あなたは大変にラッキーです。 |
注:写真は、画像上をクリックすると拡大できます。 |