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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第40回カワウ


第40回 2005/3/01
カワウ
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(38)カワウ「ペリカン目ウ科」
    英名:Common (Great) Cormorant
    学名:Phalacrocorax carbo
    漢字表記:川鵜、河鵜
    大きさ:81cm

日本各地に、比較的大きな塒を形成して生息する典型的な水辺の野鳥です。もっとも有名なのが、東京都上野動物園不忍池に営巣する集団です。おそらくウの仲間で、世界各国でも首都の中心部にこれほどまでの数で集団営巣しているのは、日本のカワウだけではないでしょうか。

長良川で有名な鵜飼での鮎漁法に活躍しているのはカワウとよく似た、ウミウです。このウを使った漁法は、歴史的にはかなり古く、紀元前にさかのぼるとも言われ、古代エジプト、中国、南米ペルーでもその足跡がうかがえるようです。

さて、カワウといえども海岸まで出かけ海で魚を取る反面(東京湾内に昼間いるウは殆ど不忍池からのカワウのようです)、ウミウが川で主として鮎採りに使用されることからも判りますように、カワウとウミウの区別は、漁場にあるのではなく、その塒にあるものと思われます。カワウは、内陸部の木のそれもかなり高いところに営巣しますが、ウミウはもっぱら海岸の崖に営巣します。

形態上、カワウは、ウミウに比べますと、背中の部分が光線の具合では緑味を帯びて見える茶褐色であり、嘴基部の黄色い部分が幅広く頬部にかけて丸みを帯びています。また尾が長いことも特徴です。また、塒から採餌場所へと早朝移動するとき、カワウは、雁のかぎ状の集団飛行を思わせるようにV字形を描きながら、かなり高度の高い空中を集団飛行しますが、ウミウは私が知る限り小数で比較的水面(海面)近くを移動します。都市部で、早朝大きな鳥がV字形を描いて集団移動している姿をみかけたらまずカワウと思って間違いないでしょう。

1988年第4刷の、山と渓谷社出版の『日本の野鳥』には、ウの減少化に警告を発していました。「日本でもかつでは本州各地で繁殖していたが、だんだん数が減り、1980年代には青森、東京、愛知、三重、大分などわずか6都県のコロニーが残るだけとなった」と。しかし、ヒトの変える環境に順化できている最早、「都市鳥」といっても良いのではないかと思われるのがこのカワウです。

ここ埼玉県では、所沢を中心にしたグループと、森林公園を中心としたグループが次第に大型化しつつあります。特に森林公園内の池に集団営巣しているグループは、少なくとも営巣数は300を下回ることはなく、埼玉県北部から群馬、茨城へとかぎ状の集団飛行が目撃されています。森林公園内の営巣写真です。

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ご覧になってお分かりのとおり、ウの営巣する樹木は、糞の燐酸度の強さでほぼ枯れてしまいます。森林公園ほどに大量に樹木が生育していればそれほどの被害とはみなされないのかもしれませんが、何らかの限界点を模索すべき時期に来ているように思われます。

ヒトとウの関わりが紀元前に遡ったように、日本人とウの関わりも万葉に歌われています。
阿部の島 宇(ウ)の住む磯に寄する波間なくこのころ大和し思ほゆ  山部赤人

夏の季語である「鵜」は、ウ科4種類の総称です。カワウのほか、ウミウ、ヒメウ、チシマガラスがその対象です。多くの俳人が、ウを詠んでいます。

 
おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな  芭蕉
わだなかや鵜の島群るる島二つ    水原秋桜子
ひいき鵜は又からみで浮みけり    一茶
嘴少し開け炎天を鵜が過ぐる     山口誓子
波にのり波にのり鵜のさびしさは   (同)

最後に、ウに関連したことばがこの鳥の生態を現してもいます。
「鵜呑み」:ウが魚を丸呑みすることからきたことばでしょう。早合点、早飲み込みの意味。ただなかなか簡単には「鵜のみ」にはできなこともあるようです。下の写真をご覧ください。

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鳥類の多くが絶滅の道を辿っていることが警告されるようになって久しいのですが、カワウのようにある程度「都市鳥」かできつつあるグループもいます。何事も「鵜呑み」にせず見守ることも必要なようです。

注:写真は、画面上をクリックすると拡大できます。