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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第39回スズメ


第39回 2005/2/01
スズメ

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(37)スズメ「スズメ目ハタオドリ科」
    英名:(Eurasian)Tree Sparrow
    学名:Passer montanus
    漢字表記:雀
    大きさ:14.5cm

日本では、誰でも、もっとも身近に接している野鳥、スズメについて。ハト、カラス、サギ(シラサギ)は、その仲間の集団に付けられた名前であるのに対して、スズメやカモメは、集団名であると同時に、特定の種を指す学名でもあります。平たく言いますと、ハトという学名の付いた固有種は存在しませんが、スズメはれっきとした学名です。

スズメ目は、チドリ目とその分類上所属する科の大きな目で、スズメの属する「ハタオドリ科」以外に「ヒバリ科」「ツバメ科」「セキレイ科」「ヒヨドリ科」「モズ科」「ツグミ科」「ウグイス科」「ヒタキ科」「シジュウカラ科」「ホオジロ科」「アトリ科」「カラス科」「ムクドリ科」を包摂します。目の単位で見るとき、カラスとスズメは親類なのです。このズズメ目を切手で表しているサイトがあります。ご参照下さい。
http://www.asahi-net.or.jp/~CH2M-NITU/suzume2.htm

人家の近くに普通に見られる野鳥、スズメですが、この近似する仲間には、ニュウナイスズメ(下の写真をご参照ください)、そして欧州では普通に生息するイエスズメが限定的に日本には生息します。(ただ18世紀半ばまでは欧州でもスズメが主流であったのが、より体の大きいイエスズメによって勢力配置が大きくかわったといわれています。)何よりも頬にある黒斑がスズメの特徴です。留鳥であることは皆さんご存知の通り。他の小型の野鳥の大きさを説明する際の標準鳥でもあります。雌雄同色。水浴びだけでなく、砂浴びも、また冬には雪浴びさえする姿がよく目撃されます。また、植物種の命名にも、「小さい」ことを表現するための形容詞として用いられます。「スズメノカタビラ(イネ科)」「スズメノテッポウ(イネ科)」「スズメウリ(ウリ科)」「スズメノエンドウ(マメ科)」「スズメノヤリ(イグサ科)」等です。「雀の涙」というとき、非常にわずかなものであることを意味するのは、同じような使われ方です。

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他方で、スズメには、稲を捕食する害鳥のイメージも未だに強く残っているようです。中華人民共和国では、かつて「四害追放運動」として、1955年、ネズミ、スズメ、ハエ、カの徹底的な駆除が政府主導によって促進されたこともあります。しかし、夏から秋にかけては、確かに稲を食べるスズメですが、とりわけ育雛期には主として昆虫を捕食し、雛にはこの動物性たんぱく質は必須なのです。所謂「害虫駆除」に重要な一翼を担うこともあるスズメが極端に減少したため、イナゴなどの昆虫が大発生、スズメがイネに与える被害をはるかに上回る稲やその他の作物の被害が増大、作物の「凶作」が毎年報告され続けたため、ついに5年後の1960年には、「四害」の対象からめでたく外されたそうです(その代わりにナンキンムシが交代したようです)。物事の見方が一面的であってはならない一つの先例を示してくれました。

古くは古事記にも記載があるように、日本だけでなく、中国、朝鮮半島でもヒトとの付き合いが長いためか、多くの慣用句やことわざがあります。
燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや(司馬遷『史記』)
先の雁より手前の雀
雀の千声鶴の一声
などで語られるスズメは、どうもあまり尊敬の対象とはされていないようです。

歳時記によると、一年中見られるスズメは他の語彙を伴って季語とされているようです。
新年:初雀
春:孕み雀、子持雀、雀の子、雀子、小雀、雀の雛、黄雀、親雀、春の雀、雀の巣、雀の卵
秋:稲雀
冬:凍雀、ふくら雀、寒雀、冬雀

誰でも知っている、小林一茶の句。

 
雀の子そこのけそこのけ御馬が通る
我ときて遊べや親のない雀

松尾芭蕉も、さほど有名ではありませんがスズメを歌っています。
  稲雀茶の牙畠や迯(にげ)どころ

近くは、正岡子規。

 
人も来ず神殿古りて雀の巣

また、『源氏物語』若紫でのこの箇所は、平安の時代の雀とのかかわりを示すものとして時々引用されます。「すすめのこをいぬきが逃がしつる、ふせごのうちにこめたりつるものを」ヒトのいなくなると同時に、スズメも去っていくといわれます。廃村にスズメはいないのです。なんと可憐な存在だと思われませんか。

下左はイエスズメ、メス。下右はイエスズメ、オスで、いずれもドイツ、ハンブルグで撮影しました。

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注:写真は、画面上をクリックすると拡大できます。