体長70㎝ほど、翼開長130㎝もある大型のサギの仲間、サンカノゴイ。個体数は決して多くはなく、環境庁の絶滅危惧種のカテゴリーでは、絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。命名の由来は定かではないようですが、サンカノとは山里深くに住む、ゴイとはゴイサギの仲間ということでしょうか。繁殖期には低く図太い声でブォーブォーとも、ボォーボォーとも聞こえるとても鳥の声とは思えない音を周囲に響かせます。鳴くのは主に夜間ですが、日中でも聞くことができます。タイトルの写真は伸び始めた若い稲の中から、周囲を窺うために頸を持ち上げたところで、非常に用心深いため日中その全身を観察することは容易ではありません。
広大な湿地の草原や葦原を生息地とします。これまで観察できたのは渡良瀬遊水地と印旛沼。ただ関東地方では、東京湾野鳥公園や北本自然観察公園などでも観察例が報告されていますので、季節的にはそれほど広くない湿原や葦原にもやってくることがあるようです。また、主として夜行性であるため、人目に付きづらいこともあり、意外な場所にいるのかもしれません。国内では北は北海道から、南は鹿児島県、南西諸島まで広く生息域とされていますが、全ての場所でごく少数と報告されています。
サンカノゴイ
←巣に戻る成鳥 巣から飛び立つ若鳥→ |
上は、印旛沼で観察したもの。左は巣に戻る成鳥で、右は巣から飛び立つ若鳥です。若鳥は全体的に色が薄く、また足も黄緑色です。とりわけ趾(あしゆび)が弱々しいのですが、成鳥ともなるとより強固で、がっしりとしています。下の飛翔する成鳥の趾を参照ください。この繁殖地では、留鳥といえますが、北海道では夏鳥、本州以南では冬鳥というのが一般的な説明です。関東地方では、東京湾野鳥公園や北本自然公園などの繁殖していない地域では冬になると渡ってくる渡り鳥といえます。
飛翔するサンカノゴイ |
サンカノゴイも危険を感じると、ヨシゴイと同じく長く首を垂直に立て周囲の枯れた葭などに同化するかのように直立不動の姿勢で、身を守るといわれています。ただ私はサンカノゴイのそうした姿勢には出会えておりません。広大な葭原などの湿原を繁殖地とするだけに、その生息環境が改善されていくことは考えにくく、何とか生き延びてほしいと願うしかありません。
注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。