春と秋の年二回、渡りの途中の旅鳥として、国内の広い範囲の沿岸部で観察されるメダイチドリです。国内に立ち寄るメダイチドリは、カムチャッカ半島からアリューシャン列島の一部などで繁殖します。越冬地は東南アジアからオーストラィア、ニュージーランドの沿岸部に及ぶといわれています。ただ、ユーラシア大陸中央部(パミール高原、チベット地方)で繁殖する個体群もいるといわれ、その個体群は、インド、中近東、アフリカ東部の沿岸部で越冬するようです。
関東地方では、野鳥観察地としてよく知られる、東京湾野鳥公園、三番瀬、谷津干潟でも毎年必ず一定数の群が観察されます。滞在は3,4週間程度かと思われます。タイトル写真は綺麗に繁殖羽に換羽を終え、これから繁殖地へと向かう個体です。下右側の個体はいわゆる冬羽です。繁殖羽と冬羽で大きく色彩が異なります。メダイチドリとよく似たオオメダイチドリは、繁殖羽へと換羽を終えても、胸部にこれほど明確な橙色がでることはありません(まったく橙色味が胸部には入らないと言った方が正確です)。
他の多くのチドリの仲間と同じく、食性は動物食。下左は、好物のゴカイを砂地から慎重にひっぱりだそうとしているところです。この状態から、更にゴカイ全てを引っ張り出すまで頸を上げ、全てが出てくると小走りに潮だまりに走りさっと塩水で砂を落としてから飲み込みます。メダイチドリを観察していて、いつも微笑ましく見かける一シーンです。
雌雄ともに繁殖羽では橙色が入りますが、タイトル写真の個体は橙色味が強く喉の部分との境界にネックレス上に黒いラインが入っています。これはオスです。他方、下左の個体の橙色味はそれに比較して薄く、ネックレス上の黒い境界線がありません。こちらがメスです。
メダイチドリは数十羽から多いと数百羽の群れで行動します。国内に立ち寄るメダイチドリは、ほとんどを、海水域や汽水域の海岸近くの砂地で見かけますが、時として淡水の池や湖の付近にある内陸の畑などにも立ち寄ります。下は、餌場を求めて飛翔する小さな群れですが、翼の裏側から腹部、尾筒下部を含めて、下部がすべて白いことがお分かり頂けるでしょう。また、群れで行動するので、餌場をめぐる争いも時としておこります(写真上右)が、相手を傷付けるにいたることはありません。
下の二個体はともに若鳥(幼鳥)で、羽根に白い縁取りが残っています。また、脚は、成鳥が黒褐色であるのに対して、黄緑色をしています。伸びをするメダイチドリの画像(下右)からは、羽に白い帯が入っているのが分かります。
繁殖羽の状態では雌雄ともに目の周辺の黒い過眼線が実に目立ちます。遠くから見ると目の周辺部の黒い過眼線も含めて目と考えると実に目が大きいことになります。私は、メダイチドリ(目大千鳥)の命名は、それに由来しているのではないかと思っております(鳥名の由来辞典にも、由来が記載されておりません)。上の幼鳥を比べてみましても、顔に直射日光が当たっている右の個体に比べて、左では目の周辺に影がさしていて、あたかも目自体が大きいように見えます。
7月も後半になると、早くも繁殖活動を終えたメダイチドリ達が越冬の旅の途中で日本列島に立ち寄るようになります。この夏、おそらく冬羽が圧倒的に多いと思いますが、メダイチドリを浜辺で、磯でさがしてみませんか。
注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。