日本全国に、山野を問わず広く生息する、恐らく誰でも一度は目にしたことのある留鳥で、どの季節にも目にすることのできる馴染み深い鳥です。大きさは、ほぼスズメと同じ15cm、頭と喉の部分は黒く、頬の部分は大きく白色。このコントラストだけでスズメとの違いがわかります。喉の黒い部分は胸部から腹部、下腹部に及び、「黒いネクタイ」をした野鳥ともよく書かれています。実はこのネクタイ部分が、シジュウカラとよく似た、ヒガラ、コガラとの区別をつける大きな特徴です。ヒガラ、コガラには腹部に達するような黒いラインはありません。ですから、郊外の公園などで顔部の白黒のコントラストの強い小さい野鳥といえばまずシジュウカラと思って間違いないでしょう。またこの黒い帯が広い個体が雄、狭い個体がメスで、一夫一婦制の番をなすといわれています。
「ツツピー、ツツピー」、「ツピー、ツピー」若しくは、「ツッピン、ツッピン」などと鳴きますが、最後に「ジュジュジュ」あるいは、「ジュクジュクジュク」といった終わりの挨拶が入りますので、様々な鳴き声に惑わされてもちょっと聴き込んでいるとすぐにこの鳥だと識別できます。
日本のシジュウカラの腹部は白いのですが、これが欧州に行きますと黄色になっています。かつて、旧ソ連時代にシベリアのウラジオストックに行きましたが、そこでのシジュウカラのお腹は、白でした。ユーラシアのシジュウカラは、ウラル山脈を隔てて、お腹の色が変わるのではないかなーと仮説を立てていますが、どうでしょうか。
この鳥は単独種で群れをなすだけでなく、ヤマガラ、ヒガラ、コガラなどの他の種類の鳥とも混成の群れを作ることがあります。あまりヒトを恐れず、人工の巣箱に入り、営巣、育雛することで、その生態がよく観察、報告されています。かつて、さいたま市秋ヶ瀬公園での産卵、育雛から雛の巣立ちまでをNHKで毎朝放送していたことをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。
1990年代後半、真冬に、韓国、草束(ソクチョ)まで出かけたときのこと。ソウルまでの帰りの航空便が積雪による滑走路凍結と視界不良の為キャンセルとなり、急遽バスで7、8時間かけて戻ったことがあります。雪に覆われ凍結し、渋滞する山道の傍ら、雪の重さに今にも折れそうな小さな松がわずかに動いているのが、ノロノロと進むバスの車窓から目に留まりました。そこからぱっと飛び出しては戻ってきていたのが、このシジュウカラでした。何となく重苦しい気分が、寒さの中で活発に、餌を求め、けなげに動き回る小鳥のおかげでホッと落ち着いたものです。
俳句の上では、この鳥は、「秋」の季語とされているようです。(大辞林による)
むずかしや どれが四十雀 五十雀 一茶 老の名の ありとも知らで 四十雀 芭蕉 |