冬になると、市街地の公園、野球場、そして庭先などのごく身近に見ることのできる、ムクドリやヒヨドリほどの大きさの野鳥で、ほぼ日本全土に(鹿児島では見かけましたが、沖縄では今のところ見たことがありません)、シベリアから日本海を越えて10月下旬に飛来する馴染み深い野鳥です(今年、さいたま市見沼田圃に来たのは11月20日でした)。福井県の県鳥に指定されてもいます。赤いピラカンサやナナカマドの実を嘴に加えたカットや、熟れた柿をうかがうカットはこの鳥の紹介写真で、よく見かけられるところです。地面ではミミズをほじくり、樹上では木の実を食する、雑食性の活動的な野鳥です。
喉は白、目の周りは黒く、眉班部は白っぽいアイボリー色で、目の周りの黒と対照を成して目立ちます。また背中は明るい褐色、胸から腹にかけて白地に黒の斑点が目立ちます。ただ、何匹かを注意深く見ると、胸の黒斑部の大きさや密度、背中の褐色の色合いにかなり個体差があります。雌雄の際立った外見上の相違はなさそうです。
大きさとシルエットのよく似た仲間に、シロハラ、アカハラ、一回り大きいトラツグミなどがいますが、腹部の黒い斑点、白い眉班を確認できれば、他の鳥と見間違えることはないでしょう。最もこうした仲間が、住宅地の庭先や、野球場の芝の上に来ることは、まず考えられませんが。
驚いて飛び立つとき、「キュルルキュルル」若しくは、「キュキュ」と、私には子猫の声のように聞こえる独特の甲高い声を出します。春旅立ちの頃、まれに囀りを聴くこともできます。「ポピリョン、ポピリョン」、「キョロキョロ」と柔らかく聴きなせます。かすみ網で大量に捕獲され、食用にされつづけたせいでしょうか、ヒヨドリやムクドリに比べ、ヒトにはかなり警戒心が強いほうです。地面にいる時よりも、樹の小枝に止まっている時の方が、背筋をまっすぐ、凛としているようで見目麗しく映ります。背中を丸めて路上に腰を据える日本の若者には、よいお手本なのですが。
日本でかなり古くから行われてきたこのかすみ網猟が、最初に禁止されようとしたのは、 GHQ(連合国最高司令部)天然資源局野外生物科長の、O.L.Austin(オースチン)氏の、 1946年(昭和21年)になされた勧告によるものです。 その後この運動が、1947年の鳥類保護連盟結成となり、同年4月10日日比谷公会堂での 「バードデーの集い」となり、1950年以降の5月「バードウイーク」(愛鳥週間)となって 今日に至っています。残念ながら、未だに密猟の蠢きは根絶できていないようですが。
ツグミは俳句の上では秋の季語。
鶫死して翅拡ぐるに任せたり 山口誓子 逆落す鶫の群れや露の穴 水原秋櫻子 |