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第141回 2013/8/01
ケリ
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ケリ

141)ケリ 「チドリ目チドリ科タゲリ属」

    英 名:Gray-headed Lapwing
    学 名:Vanellus cinereus
    漢字名:鳧、計里、水礼
    大きさ:34cm

国内で観察できるチドリの仲間の中では、最も大きい、ケリです。およそハトほどの大きさといってよいでしょう。水田地帯、湿地帯、干潟に生息するといわれていますが、淡水系以外で見かけた経験はありません。主として淡水系の水辺の野鳥といってよいでしょう。国内の分布は、非常に限定的だと思われます。関東地方では千葉県の一部、群馬県の一部、埼玉県の一部で見かけたことがありますが、それほど多くの個体群ではありませんでした。東海地方から関西地方にかけては、比較的容易に観察できるといわれますが、九州、四国、東北地方ではあまり観察されていないようです。関東から東海、京阪地区では、留鳥といってよいかもしれません。北海道では旅鳥、九州地方では冬鳥と分類されます。

世界的には、日本を除くと、モンゴル、中国北東部で繁殖し、冬には東南アジア、中国南部に渡るものもいると説明されています。事実、ある年の冬、香港米埔環境保護区で見かけたこともありました。つまり、東アジアにだけ生息するチドリだといえそうです。

大きくて目立つせいもあるのでしょう、育雛期間は攻撃的だと書かれたネット上の記事も目にしました。ケリが攻撃的だというのではなく、外敵に対して集団防衛するし、また個としても防御反応が早いという方が正確でしょう。また、それだけでなく、雛に危害がおよぶ可能性がある場合には、コチドリなどと同様に偽傷行動を採ることも知られています。ただコチドリは傷付いたふりをするのに羽を地表に接触させますが、肢の長いケリではそこまで羽を下ろすことはないようです。

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営巣活動を直接目撃したことはありませんが、集団営巣するのではなく、ある場所に分散化して営巣、育雛活動をするようです。ただ冬場の越冬期間中は、小さい群れを構成している場面にはよく遭遇しました。写真上左は、利根川沿いの荒れ地で越冬するケリたちです。写真右の様に、単体で自由に行動する個体も散見されます。

下左の写真でお分かりのように、翼を広げますと下面は白、その先端は黒、頭部が明るい灰色、頸周りが黒で、大変綺麗なコントラストを見せてくれます。黄色い嘴と先端の黒、また光彩の赤などがそれに色合いを添えています。上の写真のように、地上にいる時には正面から見ますと青灰色の頭部と茶色の羽しか見えません。それがいったん飛び立つと体の下、翼の上下の白さが非常に印象的に目立ちます。

下右は若鳥です。霞ヶ浦地区の水田地帯を8月に訪問した際の1シーンです。頭部が明確な青灰色ではなく、頸周りにも黒が入っていません、おそらく、当年の春生まれた若鳥であることは間違いないでしょう。

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ケリは夏の季語です。

水札(けり)の子の浅田に渡る夕から  暁台 (1809)

夏の水田に夕日が射す頃ケリの若鳥の歩いていく様子は、ちょっと涼しげな感じさえ受けます。江戸時代後期に詠まれた句です。

水札鳴いて日陰ちろつく流哉   其袋 (1690)

江戸時代でも初期に詠まれた句です。流れの揺らぎがケリの鳴き声でより大きくなったかの幻想を抱かせます。

ケリはハトほどの大きさで、肢の長いスマートな体型です。関東地方以南では、田圃や湿地帯をよく探せば意外と身近な場所で見つかる可能性があります。鳴き声からこの名前が付けられたケリです。「ケリッ、ケリッ」と聞こえたら是非その付近に目を凝らしてみてください。

(注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 



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