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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第135回ソウシチョウ

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第135回 2013/2/02
ソウシチョウ
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ソウシチョウ

134)ソウシチョウ 「スズメ目チメドリ科」

    英 名:Red-billed Leiothrix、Pekin Robbin
    学 名:Leiothrix lutea
    漢字名:相(想)思鳥
    大きさ:14.5cm

インド北部、マレーシア半島北部、香港を含む中国南部に生息するソウシチョウをご紹介します。中国では、古来愛鳥家が、その鳴き声を愛でるために飼養してきた野鳥で、ガビチョウとともに最も人気のある飼養鳥といえます。香港の九龍(カオルーン)公園の木陰には、時期ともなるとソウシチョウやガビチョウを入れた竹かごを枝に吊るし、声の良さを競わせる風景を何度か見たことがあります。

九龍公園では、比較的背の低いブッシュの茂みに頻繁に出入りし、出てきたときの色彩の派手やかさに何度かカメラを向けました。単独で行動する際にはかなり敏捷で、一か所にとどまることがほとんど少なく、残念ながら撮影を断念したことが何度もあります。国内では、1980年代以降急速に生息圏を拡大しているといわれています。日中国交回復に伴う日中間の貿易拡大の一環として、ガビチョウとともに多くのソウシチョウが輸入されました。飼養鳥として人気があまり出なかったことから、ペット業者が放鳥したことがこれほどまでに生息域を拡大した大きな原因だと私は考えています。飼養していたケージ(籠)から逃げ出した偶然的かつ少数の個体が、一挙にこれほど全国的に広まるとは考えにくいからです。

どうもソウシチョウは、近年ますます生息圏を拡大しつつ、その数も増大させているように感じられます。タイトル写真は群馬県小根山森林公園(松井田町)、すぐ下と一番下左は群馬県庚申山公園(藤岡市)、一番下右側の写真は埼玉県荒川大麻生公園(熊谷市)で撮影したもので、私の住む埼玉県神川町でも見かけております。そしてこの写真は全てこの冬の間に撮影したものばかりなのです(2012年12月~2013年1月)。

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従来生息してきた他の種類の野鳥の生息を脅かす危険性があるとして、特定外来種、それもワーストの部類に区分されています。ソウシチョウの繁栄を良しとする気持ちは全くありませんが、特定外来種指定の基本的な考え方が、固有種の保全を目的としたものであれば、生物全体の輸入に大きな網を大胆にかけることから始めるべきだと思えてなりません。種の保全のため全生物種の商業的輸入を禁止して、WHOが提訴するとは思えないのですが。

「江戸鳥類大図鑑」(平凡社)をみますと、多くの外来野鳥種が江戸時代、長崎から輸入され、愛玩されでいたことが分かります。このソウシチョウも掲載されており、「南相思鳥(なんそうちちょう)」や「黄雀(おうじゃく)」と呼ばれていたようです。いわゆるカゴヌケの個体が、屋久島で繁殖したとも記載されています。カゴヌケによる繁殖は、必ず地域に少数限定化されるのが常なのです。

ソウシチョウの好む生息域は、低山から亜高山にかけてで、林床をササが覆う落葉広葉樹林・針広交雑林とされ(日本の野鳥550「文一総合出版」、山野の鳥・外来種の部)ています。筆者の経験でも、群を見かけた場所はほぼ笹の茂る山間部でした。雌雄の別は、メスがより薄い色合いをしているとされますが、実際の観察で確信を持って断定することはかなり困難です。

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上左は、群れで餌を取っているところ、右は水場で水を飲むところです。繁殖期がどうであるのか不明ですが、非繁殖期の冬場では群れで行動するということができます。

雌雄の別は分かりませんが、嘴基部の色に個体ごとに、大きな違いがあります。タイトル写真の個体の嘴基部はわずかに黒いのですが、2番目写真の嘴基部の黒い部分はかなり広いのです。また、上左の群れの中でも一番下右端の個体と他の個体の嘴基部の黒い部分の面積は明らかに異なっています。これはおそらく、嘴基部の黒い部分が少ない個体は成鳥で、黒い部分の多い個体は若いのではないか(第1回もしくは第2回冬羽)と思われます。上の写真の左の群れは比較的ヒトを恐れることなく大胆に行動していたのに対して、右の個体群は非常に敏感でした。左の個体群の嘴基部がかなり黒いのに対して、右の個体群の嘴基部はほとんど黒くありません。

ソウシチョウはどうも非繁殖期には一か所に留まることなくかなり広範囲に移動しています。逆にそれゆえに、個体数が増えていると思えるのかもしれません。繁殖期の活動の様子から、雌雄の別の明確化を含めて、ソウシチョウの生態をもっと幅広く観察する必要があるように思われるのです。まだこの色彩鮮やかなスズメ大の派手な野鳥を見たらぜひじっと観察してみませんか。

 

(注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 



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