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第20回 2004/02/05
ふしぎの植物学
20

書名:ふしぎの植物学 身近な緑の知恵と仕事
著者:田中修
出版社:中央新書
出版年月日:初版2003年7月25日
ISBN:4−12−101706−4
価格:760円
http://www.chuko.co.jp/new/20037/101706.html

前回の『オオブタクサ闘う』に引き続いて、今回も植物についての著作をご紹介します。第18回で紹介した『生命40億年全史』に詳細されているように、生命が地上に進出できたのは今から約4億年前です。それまでの36億年という悠久の時間の流れは、実は植物による水の中での光合成の結果生み出された酸素が大気中に増加していき、酸素呼吸する動物を地上で生息させる環境整備の期間でもありました。この意味で、植物は動物の生みの親です。ただこの36億年の海中での生命活動は、植物自体の陸上への上陸にとっても必要でした。つまり太陽光線に含まれる有害な紫外線を、酸素から生成されたオゾンが吸収、地上への影響を遮る働きもしていたというわけです。

また、今日いかなる意味でも植物が存在しなければ、動物は存在できません。もっとも単純に、生態系の頂点に立つ我々人間の食生活を考えて見ましょう。菜食主義者は言うに及びません。肉食主義者でさえ、その食する食肉のもと、動物は最終的には植物を餌としています。日常の食生活の基本は、全て植物によって支えられているのです。さらに動物は全て酸素呼吸しているのですから、植物の光合成による酸素補給がなければモノを食べる以前に死滅してしまいます。つまり植物を知るということは、私たちが生活できてきた、また今後も生活できるために根本的に必須な諸条件を知るということです。

この著作は、動物的用語を用いて、時として擬人的に植物の生命活動のあり方を判りやすく説明してくれます。

第1章 何を食べているのか
第2章 ストレスと闘う
第3章 からだを守る
第4章 季節を先取りする
第5章 生殖に工夫を凝らす

と進んでいきます。これらの各章のタイトルの主語は全て植物であることに留意ください。ヒトが主語ではないのです。

また、ヒトには五の感覚があるといわれています。味覚、聴覚、視覚、臭覚、触覚です。さて植物はどうでしょうか。この著作をよく読んでいますと、ヒトとは必ずしも同一の感性ではないが、基本的な機能の点で、植物にもこの感覚が存在し機能していることを説明してくれます。他方、世界人口の増大による食生活の肥大化のここ数世紀の急速な伸張度合いに、果たして植物はついていけるのだろうか、歯止めのきかない森林の消滅化による二酸化炭素の増大、オゾン層の破壊は、人類を死滅の危機に追いやってはいないのかという問題を、さりげなく織り込んでくれてもいます。

植物に興味のある方に限らず、生命活動に関心のあるかたは、是非この判りやすく、問題点の鋭い指摘を随所にちりばめたこの著作を手にとられることをお勧めしてやみません。