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第93回 2008/07/01
梅雨の最中、開催される洞爺湖サミットに寄せて

 すでに皆様ご存知の通り、6月14日午前8時過ぎ、岩手県南部を震源とするマグニチュード7.2を観測する強震が岩手県、宮城県を中心とする東北地方を襲いました(岩手・宮城内陸地震と名付けられました)。行方不明者の探索が今なお続いているのですが、北海道を除く日本全国が梅雨の真最中です。被災地への降雨が被害を拡大するのではという懸念が報じられております。直接、間接に被害にあわれた皆様に、心からお見舞い申し上げます。

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 さて、今月(7月)7日から北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)が開催され、地球温暖化対策が主要テーマの一つとされています。警視庁は開催地の北海道だけでなく、首都圏におけるテロへの警戒態勢を強化すると月末近くに発表しました。かつての京都議定書できめられた、我が国の義務とされる「1990年比6%の二酸化炭素削減」をどのように実現するかが連日国内のマスメディアで報じられる反面、日本以外の参加各国のこの問題へ取り組む姿勢に非常にアンバランスがあることが懸念されているのが現状です。

 この問題に対しては、たまたま今月の「みだれ観照記」で、武田邦彦著作の「偽善エコロジー」を取り上げましたので、ご参照ください。残念ながら、昨今のマスメディアは、すべて環境保護へ向けて、京都議定書の遵守、もしくは強化で足並みを統一していますが、私は次の点で、大いなる疑問を感じております。

 まず第一に、ここ十年ほどの地球温暖化の様々な兆候を、人為的なもの、それも人間の鉱工業生産や消費活動による二酸化炭素の急激な増加によるものであると決めつけていることです。二酸化炭素が増加していることは事実のようですが、そのことが直接的に「温室ガス効果」として地球温暖化をもたらしているとする論理には、飛躍があるように思われてなりません。

 この点に関わって、ここ十年という短期的なスパンで見た温暖化現象は、内的な要因というよりも、むしろ太陽光照射量の急激な増大、つまり太陽活動の一時的な異常によるとする論説が、今年「文藝春秋」5月号で発表(丸山茂徳著「地球はこれから寒冷化する」)されました。実に、京都議定書のよって立つ、二酸化炭素を地球温暖化の犯人とする、基盤自体を拒否するものだったのです。これに対する公的な環境保護機関の反論、マスメディアの反論は一向に表に現れず、完全に無視しています。不思議でなりません。

 そして第二に、京都議定書での我が国の達成目標自体に無理がある(むしろ合理性がない)という説も、同じく「文藝春秋」誌上で幾度か目にしましたが、いまだに反論がありません。「観照記」で取り上げた「偽善エコロジー」の著者は、我が国の総二酸化炭素排気量の全世界に占める割合からして、6%の削減がたとえ達成されたとしても、地球規模ではほとんど意味を成さないと結論付けさえしているのです。

 つまり、洞爺湖サミットで日本が推進しようとしている、「京都議定書」の考え方そのものが一方では完全に拒否され、また、その方針が守られたとしても意味がないという公然たる見解が、決してマイナーではない雑誌に明らかとされているにもかかわらず、主導する側の政府とTV、新聞のマスメディアは完全に無視を決め込んでいるのです。

 二酸化炭素の増加が、地球温暖化と何の関係がないとしても、また日本だけの努力が地球規模では何の意味がないとしても、なお二酸化炭素排出はできるだけ削減すべきであることは事実です。それは、すでに限度のあるいわゆる化石資源の燃焼によってもたらされてきたからです。化石燃料に頼らない新しいエネルギーの開発は、代替えエネルギーの必要性から考えられるべきで、地球温暖化というヒステリックな「一大危機」から考えられるべきではないのです。

 6月29日の読売新聞の報道では、「エコ発電費用料金転嫁」と題して、太陽光や風力といった化石燃料によらない新しいエネルギーの使用を政府が使用量と期限を限定することを政府が検討を開始したと報じています。それは他方で、目標設定によって電力コストが上がり、それをある程度認めていくという示唆にほかなりません。「危機」をあおることが、こうした「経済結果」を生む「効果」となっているのです。代替えエネルギーが必要であることは厳然たる事実として、それは現有エネルギーの期限を科学的に解明し、代替えエネルギーの開発、使用コストを相互に分析した上で取捨選択の判断を冷静にすべきことで、危機感をあおることによって早急な対策への取り組みを策定し、コスト要因を一面無視することがあってはならないように思われます。

 「偽善エコロジー」にも述べられていますが、省エネルギーの名前の下、リサイクルされると称されて一般家庭から排出された紙やプラスティック容器が、実態はより多くの石油消費をもたらしているとすれば、これはそれこそ偽善にほかなりません。丁度今月、環境問題の一大イベントである北海道洞爺湖サミットが開催されるこの時期は、中央行政の省エネルギー政策の下、地方行政が指導するエコ活動(プラスティックや新聞、雑誌などのリサイクル用と称した分別ゴ出し、収集)が、本当に化石燃料の消費量の削減につながっているのかどうか考え直してみる機会ともなりそうです。






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