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第43回 2004/5/01

全国的に春の嵐に見舞われた一日、あるオーディオ専門店の経営者から、ここ30年間程のオーディオ業界の趨勢を、団塊の世代の置かれた状況から説明され、わが身に照らし合わせて、うなずけることが多い話を聞く機会がありました。

団塊の世代が学校を卒業し、次々と世に出始めた昭和40年代中盤から、オーディオ業界はそれこそ右肩上がりに伸張を遂げた。ところがその世代が結婚し、子供たちをもつにつれ、次第に購買力が低下し、それにつれて、オーディオ業界も下降していき、さらに大手家電メーカーを中心とした低価格化戦略が拍車をかけていった。今日ではあたかもオーディオ業界は「死に体」の様相を呈するに至っている。しかしこの世代もいまやリストラ、そして定年を前にし、再びこの市場に帰ってくるのではないか。というのが、きわめて大雑把にまとめた概要だったと記憶しています。

皆さんよくご存知のように、「団塊の世代」とは、後に経済企画庁長官に抜擢された堺屋太一氏が、1980年(昭和55年)文藝春秋から出版した、「団塊の世代」で最初に規定した造語で、いまや普通に使用される単語として認知されているようです。氏の規定によれば、「終戦直後の1947年(昭和22年)から1949年(昭和24年)にかけて、空前絶後の大増殖を行った。この3年間に生まれた日本人は、その直前よりも20%、直後よりも20%も多い」世代を指します。

第二次世界戦争後の一大ジャズブームを生み出したのは、団塊の世代より一世代前の戦前、戦中生まれの人々でしたが、エルビス・プレスリー、ビートルズを誕生させ、育てたのがこの世代といってよいかもしれません。「舶来」のかっこいい音楽とリズムを吸収することから、自分たちにとって本当に楽しめる音楽を既成の枠にこだわることなく自由に求め、自己表現する時代を作ってきた世代といえるかもしれません。

団塊の世代のうち、企業勤務生活を経た多くの方達は、勤務を始めて以来既に30余年を過ぎてきました。ある意味で自分なりの時間と余裕をもつべきときが来ているように感じられます。さて、堺屋太一氏は、日本人の人口の急速な増加に注目され、この造語を作りましたが、この年代の人口急増は、ほぼ全世界に共通です(但し欧米では、ベビーブーマーと呼ばれましたが)。アメリカ合衆国大統領となったビル・クリントン(1946年生まれ)もその一人です。

昨年の春、スペイン、マジョルカ島に出張することがありました。CECの欧州でのパートナーがそこに住まいを構えているためですが、その際、パートナーの近隣に住む、私と同世代のベビーブーマーで画家の方を紹介され、自宅に招待されたことがあります。彼はCECのベルトドライブCDプレーヤーの購入を検討していましたので、自分のシステムを積極的に見せてくれ、何かと忌憚のないコメントを期待されました。彼のその当時のシステムの評価はさておき、彼の話の中で、「より良い音楽表現を求めて、次々に足していくシステムは煩雑すぎてもう十分。スピーカー1セット。アンプ1台、それにCDプレーヤー1台でシンプルにシステムを作りたい。音楽を楽しむときに、シンプルなオーディオシステムで、十分なスペースの与える余裕がほしい。但しかつての(日本の各メーカーが主導した)システムコンポーネントといわれたものよりは、きちんと音楽表現ができること。」という一言がありました。端的に言うと、よりシンプルでより良い音楽表現をということでしょうか。

同世代の彼から言われたからではありませんが、これは私が常々思っていたこととまったく一致し、こうして現在のCD3300とAMP3300のプロジェクトをキックオフすることを最終的に決断させてくれました。その意味で、このシステムは、団塊の世代に向けての私たちの発信です。それ以前、またもっとはるかに若い音楽ファンの皆様に共感していただければそれに勝る喜びはありません。このシステムは、進化を止めません。スタートしたばかりですが、今後の発展にご期待下さい。