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第142回 2012/8/9

「ロンドンオリンピック」

 第30回夏季オリンピックが先月27日、英国ロンドンで開催され、今その最終段階に入ろうとしています。今回のオリンピックでは、これまで宗教上の理由で女性選手の出場を拒否してきたイスラム国家がすべてこの方針を転換し、史上初めて参加するすべての国から男女の選手が出場する大会となりました(ただし、標準記録未達成のために女性選手がいないケースを除く)。また競技種目として、初めてボクシングに女子種目を設定し、競技対象の全種目で男女が参加することになりました。その意味では、男女格差の壁を取り除いた史上初めてのオリンピックといえます。

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 さて、私たちは通常日本語で、英国またはイギリスとこの開催国を呼びます。ただ、英国選手のユニフォームに表記される3文字略語は、GBRであり、表彰式などで英語の国名表示がTV画面でなされる場合には、United Kingdamと表示されます。日本の場合には、3文字表記でJPN、フル表記でJAPANですから、略語であることが一目瞭然です。実は、英国の正式な英語での国名は、次のように表記されます。United Kingdam of Great Britain & Northern Ireland これを私なりに訳すと、大ブリテン及び北部アイルランド連合王国となります。

 つまり、3文字略語で表記する場合には後半のGreat Britain & Northern Irelandを略し、国名表記には前半が使用されているのです。ご存じのように、英国はイングランド、スコットランド、ウエールズそして北アイルランドの連合国です。日本で英国をEnglandと呼ぶことは、実は正確ではないのです。通常、世界的な英語の世界では、英国はUK、英国人はBritishと呼ばれることが多いのです。英国を、イングランドもしくはイギリスと呼んできた日本の歴史は、ポルトガル語のInglrez に由来するようです。このオリンピックを機に、英国をイギリスと呼ぶことをやめたらどうかと提案するつもりはありません。なぜならイギリスといわれても、とうの英国人には通じないからです。ただ、イギリス=England=GBRとなると大変に正確性を欠くことになりますので注意が必要です。

 さて今回のオリンピックでは、日本チームの柔道での不振が大きく報道されています。1964年東京オリンピックで初めて公式種目として認められた柔道ですが、今大会までオリンピックでは何らかの重量別クラスで優勝してきたことは周知のことです。柔道はもともと日本の創めた競技。それゆえに勝って当たり前の日本人の意識がありました。しかし、男子柔道の今回の優勝者なしの結果は、2009年オランダ(ロッテルダム)での世界選手権の結果(初めて金メダルゼロ)から十分予測できたことです。東京オリンピック以降、すでに58年が経ちました。その間、柔道の競技界における社会的な認知度が高まれば、当然日本柔道関係者の全世界での需要も高まります。招聘された日本柔道関係者は、その地でこれまでと同じ方法で頂点を極めることができるとは思わないはずです。創意工夫をほどこした指導をし、その度ごとの競技の結果を踏まえ、更なる指導方法の改善が長年図られ続けたことでしょう。それを上回る指導上の工夫がお家元でなされなければ、新しい時代は開けないように思われるのです。

 柔道が日本を起源とするならば、サッカーは英国を起源とします。欧州においてのイングランドのクラブチームには、その歴史にふさわしい威信があります。ところが、ことオリンピックとなると英国は話題にも上ることがなかったのがこの間の歴史です。英国には、イングランド、スコットランド、ウエールズそして北アイルランドにそれぞれ独立した合計4つサッカー協会があり、2012年から遡ること52年間、統一チームを編成できなかったのです。それぞれの協会の独立性と排他性と非協調性が強かったといわれます。それゆえに、すでに予選の段階からオリンピックには参加辞退が続いてきたのです(国際サッカー連盟、FIFAができたのは1904年。4つの英国のそれぞれのサッカー協会はそれ以前にできており、それぞれが参加を承認されていますので、ワールドカップには参加できるのです)。そしてやっとできた統一英国チームは、イングランドとウエールズ出身者で占められたのです。協調性が重要視される団体競技で、ベスト8まで残ったのは伝統に裏付けられた実力ですが、ベスト4の壁を打ち破るには、チームプレイの欠如が響いたようです。敗戦後、チームの監督は将来的には、再度の英国統一チーム編成の可能性が極めて否定的であることを示唆して締めくくりました。

 柔道であれ、サッカーであれ、ある国から始まった競技が世界的に広まるにつれ、宗主国のもつ秘密は公開され、まねられ、手を加えられ、宗主国ならではの優先性は次第になくなっていくものです。それを維持するのには恐らくこれまでに倍する尽力を必要とするでしょう。様々な競技での上位チームが、歴史的に固定的でないのはその競技の持つ世界的な評価が高いことの表れであるとも考えられるです。

 今や長く続いた競技の最終段階に入った今回のオリンピックです。何はともあれ無事の閉会されることを望んでやみません。

 

 

 

 

 

 

 




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