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第141回 2012/7/18

「いじめ問題」

 異常気象が続いています。7月の海の日を含む三連休前から集中的な豪雨が予想されていた、九州地方は、熊本県、大分県、そして福岡県と、観測史上最多の雨量を記録し、集中豪雨による川の氾濫、堤防の決壊による宅地大規模な浸水、道路の損壊や、周囲の山の崩落による道路の遮断と大変な災禍をもたらし、九州地区のこの集中豪雨による被災者は20人以上に上りました。更に、17日早朝には台風17号の発生と沖縄・奄美大島への影響が懸念されています。九州北部集中豪雨にて、災害にあわれた皆様方には深くお見舞い申し上げます。

 九州地方で記録的な豪雨が発生する一方、16日、17日と関東地方を中心に多湿下での真夏日の40℃になろうかという高温が記録され、気象庁は関東地方の梅雨明けを17日宣言しました。異常な気象状況が続く中、新聞、テレビ・ラジオでは、滋賀県大津市でのいじめ訴訟の動向と、学校当局の対応が次々と報道されています。

 滋賀県大津市の公立中学校の男子生徒が昨年10月に自殺、その両親が自殺に追いやったと思われる生徒とその保護者、監督庁である市を相手取って損害賠償訴訟を起こし、一部マスメディアが市と教育機関当局のずさんな対応を暴露していくという形で誰の目にも触れるようになっています。

 本日の読売新聞では、「市側が」弁護士を通して、「いじめと自殺との因果関係は今後認められる可能性が高い。市として和解の意思表示をしていくことになる」とする姿勢を示したようです。他方で、昨年の事件がなぜこの時期にこれほど取り上げられるようになったかという疑問には、原告(自殺した中学生の両親)の警察への被害届が複数回受理されず、加害者側生徒の両親に滋賀県警関係者がいたこと、また加害者と目される生徒の一人の親が該当校のPTA役員であったことなどがネット上で語られています。それは、実はそれほどの問題ではありません。そういうこと以上に、マスコミの耳目を集めたのは、学校当局と、市の教育委員会のこの件に対する対応の根拠が、ほぼ連日壊されていき、ついには司法の判断以前に、市と学校当局のずさんな対応が全て暴露され断罪されてしまった感があることです。

 いじめと自殺の因果関係を証明することは、おそらく大変困難です。同じようないじめを受けても、全ての児童生徒が自殺するわけではないからです。ただ、陰湿ないじめが、繊細な児童生徒の心を傷つけ、自死に導く導火線となる点では、いじめはどのような形を採るものであれ殺人罪に準ずる重犯罪だといえます。いじめは軽犯罪ではないこと、形を変えた殺人教唆でさえあることを認識すべきです。金品の提供の強要は、恐喝罪でしかありません。また加害者に、いじめが殺人罪に準ずる大変な犯罪であることを教えなかった意味で、学校教員と教育委員会と保護者には責任があります。

 「いじめと自殺の因果関係」が認められるかどうかが問題ではありません。いじめがあったことに対して、どのような対応をとったのかが問題で、本当にいじめを知らず何も対応しなかったとしたら、教育現場に携

わる資格はありません。関係者全員直ちに辞任すべきです(でもそのようなことがあるはずがありません。どれほど感の鈍い教員でも、児童生徒の動向を把握するのに長時間を必要とするとは思えません)。教育現場にいて、実はいじめがあることを知りながら(頬かむりして)、知ろうとせず何も対策を採らなかったからこそ、糾弾されているのです。糾弾されるべきは、加害者生徒だけではなく、学校関係者と市教育当局であることは間違いありません。ijime

 裁判の進行に伴い、マスメディアの報道が次第に詳しくなっていきました。それに応じて、市と教育委員会、学校長は、コメントをかえていきました。実はこの対応の変化が、実態を表しているようです。いじめがあった事実を、何とか知ろうとしない態度が一貫して学校と市教育委員会にあった。それは、自殺後のアンケートで得られた情報をすべて隠ぺいしようとし、できないとなると、少しづつ明らかにしていった行為に如実に表れているともいえるのです。

 ある情報では、当該中学校は「道徳教育実践研究事業」推進校に選ばれていたとか。そのような学校でいじめがあっては都合が悪いかもしれません。でもことは生徒児童の命にかかわっているのです。無責任な発言でよくあるのは、「いじめを受けたら相談する勇気を持つこと」というのがあります。今回の事件でも、被害者はどうも担任教師に苦境を訴えたようですが無視されてしまった。教員は、加害者になってはならないというモラルを持ち、それこそ互いに情報を交換して事態の正確な把握に組織的に努めるべきです。

 またよくあるいじめ問題に取り組む方法として、教師の、加害者への適切な対応を採ることが重要とされます。大部分の場合、一人の被害者に対して加害者は複数であることが多い(もしくは少数の被害者に対して多数の加害者)。それは、いじめの基本的な犯罪的性格を知覚しているがゆえに共犯者を増やして自己を免罪したいという心理作用だと思われます。犯罪的性格を直感している加害者は、教師にそれを隠すことから対応します。一人の教師ではとても全容を把握できるような対応は無理。それこそ学年全体、学校全体の教師が組織として、「殺人罪と本質的には変わらない重犯罪撲滅」を児童生徒と取り組む以外に方法はないと思われるのです。

 今回の自殺児童の担任教師は、いじめから逃げ回っていた。相談し、組織として犯罪行為を阻止する友を持とうとしなかったし、学校責任者の校長に、おそらく的確に情報を伝え自分の無力さを伝えることもなかった。いじめ問題が社会的な事件として取り上げられる時、いじめの被害者とその保護者が同情されます。ただ、それと同じ程度に同情されるべきは、生徒児童の犯罪を前に加害者の立場に回ってしまった、学校の教師であるかもしれません。

 

 

 

 

 

 




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