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第12回 2001/9/30

長かったこの夏の猛暑もここに来てすっかり影をひそめたようです。朝晩は肌寒い思いさえする今日この頃です。この夏、体調を壊された方も、この幾分か涼しげな天候で、次第に体力も回復されてきたのではないでしょうか。当社も、三洋電機グループから独立して、早や一年が経ってしまいました。皆様方の暖かい励ましのおかげであっという間にここまでたどり着くことができました。心から御礼申し上げます。

この一年間、残念ながら、当社のステータスシンボルであり続けたアナログレコードプレーヤー、また、一部の方々からは絶大のご評価を頂いたポータブルCDプレーヤーの生産、販売を完全に停止せざるを得なかったことは、かえすがえすも残念でなりません。

CECの方針のひとつとして、よい製品を極力適正な価格でご購入いただくことがあります。アナログレコードプレーヤーの場合には、ご存知のように既に業界の主要製品でなくなってから久しいため、全ての部品が特注となり、従来の数倍の単価でしか購入できないこと。また、価格とは別に、一部部品に至っては、部品業者さんそのものが消滅、若しくは業種転換を図ってしまい、部品を全て準備することができなくなってしまいました。

これに対し、ポータブルCDプレーヤーの場合にはこれとは条件がまったく異なります。CDプレーヤーは、昨今の必需品とも言われるようなものですから、部品はいくらでもあります。しかし、価格競争が熾烈化する中で、主要な電子部品のモデルチェンジが著しく、2年間も経ちますと、それまで普及タイプの電子部品であったものが、既に生産停止となっていたりすることが稀ではないのです。とりわけ半導体にはそれが顕著です。

また、価格の低下が一般化するのと反して、大手の電子部品メーカーさんの供給最低数量が当社の企画ではとても満足できる桁数ではないのです。そういった事情で、これまた、継続生産・販売を断念するに至っております。

なくなる物ばかりではなく、誕生しようとするものも、もちろんあります。既にオーディオ雑誌の一部には報道されていることですが、純クラスAアンプ、AMP71を10月1日より、当社東京ショールームに設置し、受注を開始いたします。関東地域以外の方には大変申し訳ないのですが、開発上のパワーと予算上、関東圏以外の主要ディーラー様への試聴機対応は、10月15日以降となります。 また、ご発注いただけました製品の、皆様方へのお届けは、10月25日以降となりますので、当分はご不自由をおかけいたしますが、ご了承いただきたくお願い申し上げます。

更に、11月には、ヘッドホンアンプ、HD51を発売予定です。このヘッドホンアンプは、AMP71の設計者、カルロス・カンダイアスの開発になるもので、ほぼ現在の市場にあるヘッドホンの全てに対応できる幅広い出力インピーダンスを誇る純クラスA対応のヘッドホン出力を持つだけでなく、出力切り換えによって、外部小型スピーカーを駆動できるA/Bアンプとしても使用することができます。通常のヘッドホンアンプとして以外に、例えば、ノートブック型パソコンの ヘッドフォンジャックにこのHD51を接続すれば、このHD51を経由することによって、外部のスピーカーから音楽を楽しむことができます。このヘッドホンアンプの詳しいご紹介は、10月中旬に、CECホームページであらためてご紹介させていただきます。

さて、最近当社に寄せられる注文傾向として、アメリカからのベルトドライブCDトランスポート、プレーヤーの引合いが増えてきていることです。ご存知の方もいらっしゃるように、アメリカのオーディオの嗜好性は、必ずしも日本と同一ではありません。例えば、日本のホームオーディオでは殆ど市民権を得ることがなかった、アナログチェンジャーがそこでは長くスタンダードなレコードプレーヤーでした。BSR、ガラードといった往時の有名ブランドを思い出される方も多いのではないでしょうか。

この2、3年間、北アメリカ市場での主要な関心は、DVDプレーヤーを中心とした、ホームシアター、マルチチャンネルへの急速な傾注となって現れてきていました。DVDプレーヤーの普及カーブは、日本のそれをはるかに上回る急速な右肩上がりを示しています。こうした事態を先取りした北米のオーディオメーカー、ディストリビューターは、こぞって、「2チャンネルの時代は終息した。これからは、マルチチャンネルの時代だ」と語り、DVDプレーヤーの開発、マルチチャンネル用複合AVサラウンドアンプ、デコーダーの開発と販売に取り組んでいったのでした。

事実、当社の北米でのディストリビューターも1998年以降、殆ど当社製品の買い付けを保留したままでした。(当社には、マルチチャンネル対応の製品はございませんので)そして3年が経過し、何ゆえ2チャンネルの引合いが、それも高級ベルトドライブに集中して(小さな流れかもしれませんが)、来ているのでしょう。いちいちその理由を尋ねるわけにもいきませんので、憶測するしかありません。マルチチャンネルの主役は、あくまでもスクリーン若しくはモニターテレビ上の映像です。

特に映画の場合、そこでは、音楽は、効果音として副次的な扱いを(決して小さくはない脇役ですが)うけます。つまり視覚がまず主たる器官として機能し、聴覚はそれに付随するものとなってしまっています。

逆に、よく、「耳を澄ます」場合、人はえてして目を閉じる場合が多いことを想起してください。(クラシック音楽コンサートの会場で、目を閉じて聴く方は、決して少なくはないのです)ここで、たいていの人の場合、何かに没頭する場合、視覚と聴覚の感度をまったく同程度に維持することは、かなり難しい作業、若しくは疲れる作業であるといえます。心身ともに健康、健全で、意気溢れる状態であればともかく、厳しい仕事、もしくは勉学の後、気分転換を図るときに音楽を聴かれる。そのようなときに、一層疲れる状態に自分を置くことはまず誰しもが望まないものです。

聴覚上、ステレオ再生が、決してマルチチャンネル再生に劣るものでないことは、70年代の4チャンネルの経験をされておられる方は実感されたところです。映像を中心としたマルチチャンネルと、音楽を中心とした2チャンネルは、その用途に応じて並存できると、私どもは確信いたしております。

さて、この9月にほぼ1年ぶりにソウルを訪問しました。今年の春開港したばかりの仁川(インチョン)国際空港に降り立つのも初めてでした。2002年のワールドカップを意識して作られた新空港は、見事に近代化されており、何かと問題の多い成田空港とは、使用上の利便さ、空港の広さ、旅客処理能力のどれ一つとっても雲泥の差を付けられたようです。空港への交通機関が、バス、タクシー、一般乗用車でしかないことが克服すべき課題ではありますが、新たに作られた四車線の高速道路の終着ポイントが空港であるため、さほどの混雑はなさそうです。(漢江をソウル市中心部へ向け渡った側に定宿がありますが、そこまでの所要時間は、従来の金甫空港から通常道路でくるのとさほど変わらず、1時間弱でした。)

ただ、私だけがそう思うのでしょうが、残念ながら最早キムチの匂いのしない空港です。このように見事に近代化されただけの空港は、韓国のアイデンティティを見事に消し去っています。飛行場の看板を西洋の近代都市のどれかと交換しても違和感がないでしょう。これは、最近の日本国内のJRの駅建設と同類です。当社の最寄の駅は、大宮ですが、この駅の看板を、例えば、同程度の人口のどこかの駅と交換しても違和感がないであろうと思うのです。近代化が、合理性と利便性を求め、結果として均質化となっていくことに違和感を覚えるのは私だけでしょうか。CECは、CECらしくあっていたいと思ったものでした。