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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第60回イソシギ


第60回 2006/11/01
イソシギ

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(58) イソシギ 「チドリ目シギ科」
    英名:Common Sandpiper
    学名:Actitis hypoleucos
    漢字表記:磯鴫 磯鷸
    大きさ:20cm

名前では、海辺にしか生息していないように聞こえますが、実際には海辺の浅瀬から汽水域にとどまることなく、水田、河川の中流域にまで広く生活圏を持っています。むしろ海とは無関係な場所で見かけることの方が多いともいえます。かなりの亜高山帯まで見かけることができるという情報もあるほどです。

私が日常的に観察する関東地方では、夏冬を問わず見かけることができますが、東北、北海道では夏場だけの野鳥のようです。留鳥または夏鳥ともいえるでしょうか。大きさはムクドリほど。雌雄同色で、木に止まることはなく、翔ぶとき以外は、基本的に地面に接触して生活しています。もっぱら水生昆虫などの昆虫を捕食、植物性のものを採餌した様子を見たことはありませんし、記録にもお目にかかっていません。

世界的な生息域としては、広くユーラシア大陸北部から中部で繁殖し、アフリカ、中東、インド、東南アジアそしてオーストラリアで越冬するというほどの広さをもっているようです。

このシギと同じくらいの大きさをもち、同じような環境に住むシギの仲間、たとえばクサシギやタカブシギと大きく違うのは、羽を閉じた状態で、腹部の白い斑が一方で尾の先端の下部(下尾筒)まで伸びきっており、他方で羽を取り巻くように首元まで上がってきていることです。この首まで伸びた白い斑の存在だけで、他のシギと見間違うことはないと思います。また、翼を広げた状態で、上面と下面にはっきりと白い帯状の斑が見えます。左は翼を広げたイソシギの様子で、翼下面の様子がよく見えます。また右は、水面を飛ぶイソシギの様子です。この写真からも、翼上面の白斑が確認いただけると思います。

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ところで、「いそしぎ」とひらがなで書くと、映画に詳しい方、若しくは50歳代以上の方には、かのエリザベステーラーとリチャードバートンが共演した、1965年のハリウッド映画作品が思い浮かぶのではないでしょうか。監督ヴィンセント・ミネリで、テーマ音楽The Shadow of your Smile(確かこの映画ではアンディウイリアムズが歌っていたのではないでしょうか)は、その後多くの歌手に歌われました。映画の原題名はSandpiperでした。実は、Sandpiperとは、嘴の長めのシギ一般を指し、イソシギの固有名詞ではありません(イソシギは、Common Sandpiper)。映画の背景が海辺であることから、日本での放映に際して供給元が、恐らくイソシギの生態を知ることなく、その名前の持つ雰囲気から、「いそしぎ」とタイトルをつけたようです。

群れを作り、波の押し寄せ、引いていく合間の浜辺の砂の上を、餌を求めてせわしなく動き回る習慣は、残念ながらイソシギにはありません。オリジナルの映画製作者のイメージに最もあったシギの仲間は、ミユビシギかハマシギ、もしくはトウネンといったところでしょうか。しかしそのいずれの名前もこの映画のタイトルには向きそうもありません。「いそしぎ」という日本語の響きが、この映画のストーリーに見合ったロマンティックな雰囲気を先取りしているようです。

 さてイソシギは秋の季語です。

 

磯鴫がいち早く知る海の枯れ  能村登四郎

満潮の磯鴫ちかし夕端居  木津柳芽

平野部の水辺で、時として海岸の磯で、ムクドリ程度の大きさで、ほっそりしたシギを探してみてください。首の方へ白い斑が伸びていましたら、間違いなくイソシギです。最後の写真は、羽根の縁に濃い褐色が見て取れるイソシギの幼鳥です。

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注:写真は、画像上をクリックすると拡大できます。