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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第52回ミユビシギ


第52回 2006/03/01
ミユビシギ


(50)ミユビシギ「チドリ目シギ科」52-1-300
    英名:Sanderling
    学名:Crocethia alba
    漢字表記:三趾鷸
    大きさ:19cm

波の打ち寄せる砂浜で、十数羽から時として数十羽の群れを作り、引く波を追いかけるように、また押し寄せる波に追われるように、忙しく動きながら砂の中の餌をあさるかわいい海辺の野鳥がミユビシギです。波の来る速度、帰る速度よりも速くなければいけません。かなり素早い歩きです。でも、グループの中には、餌取りに集中するあまりか、波を追いかけて行ったものの、押し返す波に飲まれて、大慌てで引き返すうっかり者もいたり、波に追われて必要以上に引き返し、引いていく波に追いつかない者もいたりしますので、ミユビシギの砂浜での集団行動はじっと観察していて飽きることがありません。時として、ハマシギもそのような行動をとりますが、ミユビシギほど何度も繰り返すことはなく、私の見た限りではせいぜい2、3回で止めてしまっています。

また、前進後退を波に対して直角にではなく斜めに繰り返しますので、決まった場所で見ていますと、ミユビシギの群れは近づいてくるか、遠ざかるかのどちらかです。ですから、しばらく観察していて、群れが遠くにいてもこちらの方に近づいてくるようでしたら、その場所をじっと動かずに待っていれば、意外とかなり近くまで寄ってきてくれます。昨年11月に九十九里浜で撮影した、ミユビシギの小さな群れです。

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また、波打ち際だけでなく、波のない河口の干潟や入り江に来た際には、その採餌行動自体では他のシギの仲間と異なる、特に特徴的な動作はないように見受けられます。通常シギの仲間は長めの3本の足指(内側から、内趾、中趾、外趾または、第2趾、第3趾、第4趾と呼びます)と、反対側に向いた短めの1本の足指(後趾または第1趾と呼びます)がありますが、ミユビシギにはこの後趾(第1趾)がありません。このことから和名ではミユビ(三趾)シギと付けられたように思われます。春と秋に渡って来る旅鳥でもありますが、夏場以外にはいつでも見ることができる場所(本州中部以南)では冬鳥でもあります。

他の多くのシギの仲間と同じで、夏と冬では羽の色を変化させます。上の写真のように、冬羽では胸部から腹部にかけては白く、背中の部分は薄い灰色ですが、夏羽では頭部全体と胸部から背中にかけて赤褐色を帯びてきます。冬の時期には、他のシギとの見分け方は比較的容易です。浜辺にいて腹部が白いこと、背中が褐色味を帯びていない白っぽい灰色であることがポイントでしょうか。同じように腹部が白いハマシギやヘラシギは背中に褐色味を帯びています。また、トウネンは一回り小さく、スズメと同じほどの大きさで、背中の灰色味が強く、白っぽくはありません。更に、嘴を見ますと、ハマシギはミユビシギより長く、若干先端が下を向いていますし、ヘラシギの嘴先端部は名前の通りヘラ状をしています。

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ただ赤褐色の強くなる夏羽となりますと、個体差や換羽期の進行状態の違いにより羽の色だけで判断することは難しくなります。冬羽同様、嘴先端の形状と、飛んだときの羽の上部にでるそれほど長くない白い斑(翼帯)が区別のポイントでしょうか。

古来和歌に詠まれてる浜(濱)千鳥とは、このミユビシギのことだと理解されているようです。この浜千鳥は、磯千鳥とともに冬の季語です。ミユビシギを歌ったと思われる和歌、俳句を紹介します。

 
打よする波や千鳥の横ありき  与謝蕪村
はまちどりあとの泊りをたづねとてゆくへも知らぬうらみをやせむ  蜻蛉日記

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自然な砂浜に行かれる機会があれば、何羽かでグループとなり、波と戯れているかに見えるスズメより一回り大き目の鳥を探してみてください。殆どの場合ミユビシギですから。

注:写真は、画像上をクリックすると拡大します。