誰でも知っているこの鳥。「ウグイス」の紹介にも書きましたように、ウグイス色の元祖(鶯色とはメジロの背中の羽の色です)。冬季には、里の庭先に柿の木や梅の小枝に、スズメよりも一回り小さな姿を現します。オリーブ色味を帯びた緑色(黄緑色ともいえる、ウグイス色です)の頭部、上面全体の中に、この鳥の名前の由来でもある、目の周りの白い縁取り(アイリングといいます)が目立ちます。(喉もとは黄色味を帯び、腹部は白です)和歌山県と、私の出身地、大分県の「県の鳥」に指定されています。また、普通50円切手の絵柄に採用されるほどの馴染み深い鳥です。
「目白押し」とは、メジロが群れをつくり眠る時、一箇所に寄り添って横並びにくっつきあって枝の上に止まる習性を見た人々がつけた言葉のようです。樋口一葉の『たけくらべ』に次のような一節があります。
「狭き校舎に目白押の窮屈さも教師が人望いよいよあらはれて」
地声は小さく、「ツィー、ツィー」もしくは「チィー、チィー」と、呼び交わすように鳴きあいます。雌雄は同色で、そのような鳥類に共通なように、育雛は雌雄共同作業で行います。(一般的に雌雄同色の鳥は、共同で育雛活動を行うようです)営巣は、もっぱら常緑広葉樹林の中の樹の上、枯れた草やコケを材料にしているようです。桜の咲き始める4月から盛夏までの期間、抱卵、育雛し、少なくともこの期間、1回以上の育雛活動をするようです。一度の卵数は4、5個、抱卵期間は11日間といわれています。
育雛前後の期間中は、小型昆虫、クモなどの動物性の餌を中心に採り、それ以外の期間には花の蜜や、果物の汁や実を吸い取っています。桜、梅、椿の蜜を吸う姿や、民家の小鳥寄せの餌台に乗せた、半分に切ったミカンに集まる様子は、よく写真にとられるお定まりの図柄となっています。ミカンの他に、柿、イチジク、りんごも大好物のようです。この鳥の小ささに比例した素早い動きには、特に林の中等の自然の状態では、写真家の皆さんも撮影に苦労されるようです。
囀りの声、「チィーチュル、チィーチュル、チチルチチル、チュルチィー」は、日本では、「長兵衛、中兵衛、長中兵衛」と聞きなされていますが、かなりの早口です。地声と囀りの音量には、相当の格差があります。次のURLを見つけました。聞いてみてください。
http://ww5.tiki.ne.jp/~awachan/sirabe-mejiro.htm
メジロは、季語としては一般的に秋、時として夏にも用いられるようです。
南天の実をこぼしたる目白かな 正岡子規 一寸留守眼白落しに行かれけん 高浜虚子 |