冬鳥が次第に数を増してくる季節になりました。この「野鳥記」に一度もカモ類を登場させていないことに気づきました。私が野鳥を見るようになって最初にきちんと覚えたカモ、「コガモ」を今回は紹介します。
日本に生息するカモの中で、一年中見ることのできる「カルガモ」以外のカモは、全て冬鳥として中国東北部、シベリア地方から渡ってくる渡り鳥です。(もっともある大新聞は、もう何年も前ですが、東京・皇居のお堀に子連れで飛び込むカルガモを「今年もカルガモの親子が渡ってきました」と書いていたのにはびっくりしましたが)「コガモ」はこうしたカモの中では、最も小さい種類で、れっきとした学名です。ただある夏だけは、私の日常の観測地、見沼田圃にずっと留まっていましたが、その年以降はそのようなことはありませんでしたので、例外的な夏だったのでしょう。
他のほとんどのカモと同様、コガモもオスとメスではまったく羽の色が異なります。まったく地味なメスと異なり、オスの頭部は赤褐色、目の周りは緑色、緑色をした巴状の縁取りに薄い黄色の線が鮮やかです。胴部は、白と黒の細かい模様が入り混じり、遠くから見ると白っぽい灰色に見えます。対するメスは、全身褐色、嘴はオスと同じ黒色。下の写真をご覧ください。
コガモ♀
カモは日本に渡ってきた直後は、必ずしもオスが鮮やかなわけではなく、メスと区別がつかないほどの地味な色彩の羽を纏っていることが多いようです。その状態をエクリプスと呼んでいます。エクリプスのメスに良く似たオスでも、下尾胴部分を見ますと、クリームがかった白い部分でオスだということが判ります。またオス、メスで鳴き声が異なり、オスは澄んだ声で「ピリ、ピリ」と鳴き、メスは、いわゆるカモの声、「グエッ、グエッ」と鳴きます。エクリプス状態でのオスの声は残念ながら聞いたことがありません。メスの声に類似してるものと思われますが、観察された方教えてください。
カモには、主として川や沼などの淡水に渡ってくるものと、湾岸地帯に来る塩水を好むものに分かれますが、このコガモは淡水系で、池、川、湖に着水します。また、例えば、東京・上野・不忍池で、人の与える餌に容易に近づいてくるオナガガモ、ヒドリガモ等と異なり、孤高を保つかのように、ヒトの側に近寄る姿を見たことがありません。また面白いことに、日本に最も早い時期に飛来し(10月)、最も遅くまで(6月)残っているのもこのコガモの特徴といえるでしょう。
カモは冬の季語ですが、残念ながらコガモを特定して歌った俳句にはお目にかかっていません。ご存知の方がいればこの点も教えて下さい。