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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第08回カッコウ


第08回 2002/6/12
カッコウ
カッコウ

(07)カッコウ「カッコウ目カッコウ科」
    英名:European(Eurasian) Cuckoo
    学名:Cuculus canorus
    漢字表記:郭公
    大きさ:35cm 

会社の所在地(さいたま市三橋6丁目)の裏手には、埼玉県下でも藤の花で有名な青葉園という広大な霊園があります。今年も6月早々、その青葉園からカッコウの声がよく響き渡ってきました。4月のオオヨシキリの後を追うように、5月下旬から6月初旬にかけてカッコウが東南アジアからやって来、例年夏の近いことを教えてくれます。

日本に渡ってくる、カッコウ目カッコウ科の代表的な鳥には、カッコウの他に、ホトトギス、ツツドリ、ジュウイチがいます。これらを和名で、杜鵑(とけん)科とも呼称するようです。

これら所謂、杜鵑科の鳥たちの共通点は、まず第一に全ての亜種が何らかの別の野鳥に托卵することです。つまり、他の野鳥の抱卵中の巣から、もともとの親鳥の卵を一つ、自分の卵と交換する。カッコウ科の雛は、この巣の本来の親鳥の卵より少し早く孵化し、「義兄弟、姉妹」となったであろう卵を、羽も生えていない身体の背中で、すべて押し出して(丁度卵を乗せやすいように窪みがついている)しまうのです。またこうしたカッコウ科の鳥たちの卵の色彩、パターンは、托卵相手のそれにきわめて近似しているとされます。

こうして托卵された後、一旦孵化してしまえば、托卵された親鳥は、自分の身体より大きくなっても、カッコウ科の雛たちを育てつづけるのです。親の立場から見て、育雛せず、他人(鳥)任せにすることから、「ずる賢い」と感じる方もいるようですし、他方で他の卵を捨て去ることから、「残酷な」イメージを持つ方もいるようです。

托卵する野鳥は、こうしたカッコウ科以外にも、そう多くはないようですが見られるようです。自分で子育てをしないでよい、という観点からは、ずいぶんと身勝手にも感じられる側面があることは否めませんが、他方で、他の種類の鳥の卵の形状、模様に合わせた卵を、しかるべき時期(少なくとも、本来の親が自分の卵を産み終わってから決して長時間ではない内)に産みつけなければならないわけですから、この「努力」は、ひょっとしたら、育雛の難易度に匹敵するかもしれません。どのような進化の過程を経てこういった習性を獲得していったのかは定かではありませんが、必ずしも、「悪賢い」「残酷」といったヒトの感性では推し量ることのできない自然の多様性を感じます。

また、最近では元親もかなり学習してきています。見沼田圃でも、オオヨシキリから追い立てられているカッコウをよく眼にします。また、別の地域では、オナガに托卵するケースも報じられています。(もともとは、ホオジロが托卵相手であったともいわれています)

このカッコウ科の鳥たちの共通点その二。名前が全て、その鳴き声から来ている点です。カッコウは、ご存知のとおり、「カッコウ、カッコウ」と鳴いています。ツツドリは、「ポポッ、ポポッ」と、あたかも筒をたたくように鳴くことから、また、ジュウイチは、「ジュウイチー、ジュウイチー」と聞きなすことができます。なお「キョッ、キョッ、キョッ」と鳴くホトトギスは、古くはオトトコイシ(弟恋し)と聞きなされたことから命名されたようです。

カッコウ科の鳥の中では、カッコウが最も里に近くやって来ます。ある英国の研究家によりますと、カッコウの飛翔の姿と、腹部のパターンは、小型猛禽類の「チョウゲンボウ」に極めて類似していると発表しています。托卵相手をこの姿で威嚇し、卵の取替えを容易にしているのではないかとも憶測されています。

カッコウは、托卵先を求めて日本の山野にいる間は、あまり高く飛ぶことをしません。カッコウの声が聞こえたら、是非注意深く周りを見渡してください。木に止まっているときだけでなく、飛びながらでも鳴きます。キジバトより少し大きめで、羽も、尾も長めの鳥、それがカッコウです。

 
うき我をさびしがらせよ閑古鳥  芭蕉
近き木に来て郭公の三声ほど   高浜虚子

夕方も、時として夜も鳴くときがあるカッコウ、意外と夏の涼しさを感じさせてくれます。貴重な夏告げ鳥だと思っているのですが。写真は、まだ南へ渡る前のカッコウの若鳥です。

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