●CECの技術的な伝統と革新的アイデアを余すことなく投入したトップエンドCDトランスポート
ハイエンドオーディオ機器の最終目標は「生きいきとした音楽を再現し、リスナーをあたかも演奏会場に引きずり込み、そして演奏者たちの魂、思想、情念のほとばしりまでも感じさせること」にあります。CECは1991年の春、世界初のベルトドライブCDトランスポート"TL1"を発表することで、デジタル再生の世界に新たな1ページを開きました。これはCECが1954年に、アナログ・フォノモーターのメーカーとして創業してから37年目の快挙でした。アナログ・プレーヤーの生産を通じて培った「徹底した制振技術」を、独創的な音楽性に結実させた"TL1"は、世界中の音楽愛好家、ハイエンドメーカーのエンジニスそしてマスコミなど、多くの方々から、「デジタルオーディオの世界に革命を起こした」として高い評価を受けました。その"TL1"以上の衝撃を以て迎えられたのが、翌年発表されたベルトドライブCDトランスポートの最高峰''TL0"だったのです。CECの歴史と技術が生み出した"TL0"は、「デジタル再生の理想を具現化した」と、誰しもが息を呑む完成度でした。それから13年の時を経た2005年秋一装いも新たに生まれ変わった"TL0X"が、再びデジタル再生の歴史にその名を刻みます。
●低トルクモーター・高比重ホイール・ベルトドライブが織りなす、比類なき回転精度
従来のプレーヤーは、CDに線速度一定で記録された信号を再生するため、内周から外周へ行くに従ってディスクの回転数を約500rpmから約200rpmへと変化させます。さらに偏心成分による線速度の変化にも追従させるため、1回転以下という極めて短い時間内で、線速度を一定に保つ制御が行われているのです。このような、大きな慣性を持つ回転体の角速度の細かい制御」には、大きな加速度が要求されます。しかしこの加速度が駆動系全体を揺らす振動を生み、正確なCD再生の妨げとなっていました。また、加速度を増すために不可欠であるトルクの強いモーターは高電流で駆動するため、「電磁気的ノイズの発生が避けられない」という問題も抱えていました。
D.R.T.S.(DoubleRubbers &Triple-Springs)サスペンションとティップ・トゥ(Tip-toes)型インシュレーターから形成される3点支持。その3点でフローティングすることから必然的に六角形に形成されたメカシャーシは、20mm厚アルミニウムと10mm厚真鋳の異種金属重ね合わせ構造。そして最厚部で20mm厚におよぶアルミニウム筐体の採用など、徹底した制振対策が貫かれています。
このように多くの改善点を残していたCDプレーヤーの回転系。この回転系が持つ問題の中で、CECが長年にわたり注目・研究し続けてきたテーマが、「回転角速度の安定化」でした。CECは長年培ってきたアナログプレーヤー設計のノウハウを投入し、理想的な回転角速度を得ることに成功しました。
まず、振動の発生を抑えるため、従来モーター部に使用されていた高トルクモーターの替わりに、大幅にコギングを減少させた低トルクモーターを採用。CDの回転起動時に有効なトルクを与えつつ、最内周において必要な回転数である約500rpmまで・ごく短時問のうちに到達させます。その回転数を、滑らか且つ安定した状態を保ちながら、約1時間かけて最外周で必要な回転数である約200rpmまで変化させるために、大型スタビライザー(直径125mm,質量450g)の持つ大慣性モーメントを利用することにしました。CD再生時の様々な固定概念を根底からくつがえす低トルクモーターと優れたホイール効果、そして静粛性を誇るベルトドライブシステム。これらの繊細にして絶妙なコンビネーションにより、アナログプレーヤーの重量級ターンテーブルを彷彿させる比類なき回転精度が実現可能となったのです。
●よりピュアな音楽再生のために...独自のサーボ方式を採用
通常、CD再生時における1回転当たりの変速量は、内周でO.OO64%、外周でO.OO27%と極めて微細な変化量です。この変化量をCECアナログプレーヤーST930のワウ・フラッター値O.OO8%と比較しても、いかに微細な変化量であるかが読み取れます。これにより、1回転または数回転の短時間内においては角速度一定と見なすことが可能です。
CECは、この微細な変化量に着目。"TL0X"は、大慣性モーメントを誇る大型スタビライザーの優れたホイール効果を応用し、従来のCD再生よりもはるかに安定化した同転角速度を獲得しました。内周から外周に至る極めて穏やかな減速(約500rpmから約200rpmへ)に対しても、そのホイール効果の持続性により、淀みのない回転精度を達成しました。もちろん、高ホイールおよび低トルクとは互いに相対関係にあるため、内周から外周に至る回転エネルギーは必然的に小さくなります。また、"TL0X"はこのホイール効果をさらに生かすため、サブコードで時間情報を取得してモーターに適切なトルクを与えています。一方、1回転以下の偏心成分による線速度の変化に対しては、全てPLLサーボで対応。つまり、音楽再生時の全領域にわたるマクロ的回転制御は、そのホイール効果を原理とする優れた機械的メカニズムによって安定化を図り、1回転以下の極微細なミクロ的制御のみ、エレクトロニクスに担わせました。アナログプレーヤーの基本的技術とデジタル再生技術の合理的融合の結果、よりピュアな音楽再生が可能となったのです。
●回転精度を支えるもう一つの主役、シャフトの軸受け
"TL0X"の誇る比類なき高回転精度を保障するもう1つの秘密は、吟味し、選りすぐられた材質を、超精密加工技術により丹念に仕上げた直径5mmのシャフトの軸受けにあります。これにより寸分の狂いもない回転精度を獲得しました。アナログプレーヤー生産38年余の実績に裏付けられたその優れた耐久性とともに、ディスクおよび重量級大型スタビライザーの静粛で滑らかな回転をお約束します。
●ノイズフィルター搭載電源部を完全独立化
常にクリアで安定した電源供給を実現するため、ノイズフィルター搭載の電源部を完全に独立化しました。しかもトランスポートの心臓部ともいえるメカニズムからコントロール部をも分離独立した3分割化を図るとともに、グランドレベルの低減化に定評のあるスルーホール両面基板を採用するなど、信号の歪み、劣化を防止する様々な方策が講じられています。 |