White
White CEC LOGO HOME 製品 テクノロジー サービス 会社概要 コラム メール English White
White
タイトル



第76回 2007/2/01
CESと秋吉敏子の世界

暖冬の続く今年の冬です。40周年を迎えた恒例のラスベガス、CESの最中に聞いた話によりますと、昨年は豪雪に見舞われたニューヨークも、今年は異常なほどの暖かさで、半そで姿の若者がセントラルパークを闊歩するほどだったようです。皆様いかがお過ごしでしょうか。

CES は丁度40年前の1967年に初めてニューヨークで開催されました。わたくしが最初に参加したのが確か1974年、雪に覆われたシカゴだったと記憶しております。その当時は、年頭の1月と、夏に差し掛かる6月の、年に二回の開催でしたが、ある時期から年初の1回だけ、場所も気候による影響の少ない、暖かいネバダ州ラスベガスに固定されました。今回は1月8日(月)から11日(木)までの四日間が開催期間でした。

これまで、いわゆるハイエンド・オーディオもしくはピュアー・オーディオ部門だけを展示した会場が、モーテル風のアレクシス・パークから都市型ホテルのベネティアン・ホテルに変更されました。報道関係者がどのようにこの新しい会場を評価しているのかを知りませんが、非常に不便な思いをしました。これまでの会場が、2階建てで比較的オープンスペースだったのが、余計に新しい会場の印象を悪くしているのかもしれません。迷路のように入り組んだホテル内部で、目指す場所を探すのに大変苦労してしまいました。

何はさておき、そのベネティアンでウィーン・アコーステック社のブースを訪問しました。一昨年末より従来のクラシック・シリーズが一新され、グラント・バージョンとなったこと、更にモーツアルト生誕250周年を記念したT-2G LTDが昨年発表されたことは皆様ご存知のとおりです。このグラント・バージョンが発表されていないのが、T-4及びT-5でしたので、この2モデルが刷新される期待を持っていたのです。しかし、同社の意向は、まず年内に、これらトップ2モデルを上回る音質を表現できる、最高機種を 2007年中に発表するというものでした。最終意匠の決定には至っておりませんが、基本構想は出来上がっており、プロトタイプを見ることができました。

基本的にはコアキシャル構造を採用。特許申請予定の独自のフラット・コーンスピーカーをメインとして採用する構想。それぞれのユニットは、特許に関わる基本部分は自社で組み立て、それを、ドイツのイートン社に支給して最終ユニット組み立てを依頼、そのユニットを再度仕入れて徹底的な検査を施したものを、製品として最終組み立てするという計画です。欧州での販売予定上限の価格は、18万ユーロ(約300万円弱)、発売開始は10月を予定しているとの広報でした。見るからによい音の出そうなフォルムとどっしりとした重量感がプロトタイプでは見て取ることができました。できれば、来る10月の東京インターナショナル・オーディオショウ2007にはご紹介できるよう、皆さんとともに期待したいと思います。

さて1月下旬、27日(土)、NHK BS2チャンネルで、「秋吉敏子、音楽生活60周年コンサート」が放映されました。これは昨年の12月4日に東京サントリーホールでのチャリティ・イベントを録音・録画したものの放映でした。

ご存知のように、秋吉敏子さんは、既にグラミー賞を11回受賞、更に1999年に「国際ジャズ名声の殿堂(International Jazz Hall of Fame)」入りし、そして遂に昨年、あの「ジャズマスターズ賞」を受賞した、世界的なジャズピアニストであり、また作曲家でもあります。秋吉さんについては、下のURLがかなり的確に「秋吉敏子論」を展開しているように思われます。

http://www.st.rim.or.jp/~success/akiyosi_ye.html

さて、この「60周年コンサート」、秋吉さん自身の作曲になる「ヒロシマ〜そして終焉から」の中の曲目「HOPE」(作詞は、秋吉さんが尊敬する詩人谷川俊太郎)を、愛娘「Monday満ちる」が歌ったところが何といっても最大の盛り上がりを見せました(NHKの番組ではプログラムの最後に放映されました)。テレビを通してではありますが、舞台と客席が一体となった高揚感や興奮の高まりが十分伝わってくるものでした。

しかし私にとって、何といっても特筆すべきは、秋吉さんのパートナーでもある、ルー・タバキンのフルートの響きが、和製楽器(太鼓、鼓など)との競演では、まったく、和楽器の横笛と勘違いするほどの澄んだ響きをだすことでした(「Sumie」)。長い夫婦関係の中で培われた協調的な音楽表現であるのか、作曲した妻の音楽性に対する深い理解なのか、はたまたルー・タバキン自体の高度な演奏上の技術であるのかは判りません。しかしこの音色が音楽として表現がされたとき、ジャズという分野を超えた、秋吉敏子独自の音楽の世界が垣間見えた気がしました。もしご覧になっていらっしゃらない、ジャズのお好きな方がいらっしゃれば、NHKに連絡を取ってみることをお勧めします。

一年の最初の月に、テレビを通してとはいえ、すがすがしい音楽にめぐり合えたことは何にもまして幸せです。

現在当ホームページは、全面改訂の作業中です。当月中には作業を完了する予定ですので、どうぞご期待ください。