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タイトル


第49回 2005/12/01
バン


(47)バン「ツル目クイナ科」
    英名:Moorhen
    学名:Gallinula chloropus49-1-300
    漢字表記:鷭
    大きさ:32.5cm

身近な公園や農耕地に見かけることの出来る留鳥です(本州北部から北海道では夏鳥とされています)。例えば、東京・上野、不忍池でも子連れのバンの親子のほほえましい姿はよく観察されるところです。大きさはほぼドバトと同じくらい。淡水系の水辺の鳥です。海水域や気水域でみかけたことはありません。

バンという名前、初めて聞くと奇妙な気がしませんか。英語の名前は、住む場所からとったもので、Moorとは湿原、沼地を意味し、Hen は雌鳥のこと。つまり湿地帯に住むやさしげな風貌のニワトリということでしょうか。実は、日本名もこの鳥の住む環境から名付けられたようです。つまり、水田地帯に住み、水辺を離れないことから、水田の番をしていると見なしたようです。江戸時代まではオオバンも含めた総称だったようです。江戸時代後期の『梅園禽譜』には、「大バン」に対して「小バン」と注釈書きされ、「大バン」の解説では、「本草曰方目ハ護水鳥常ニ在田澤ノ中ニ見ルハ人輙鳴喚ニテ不出漁人呼テ為烏鶏ト」と説明されています。また、「小バン」の項では、図の解説に、「鷭(バン)又梅首(バン)鶏 漁人呼テ烏鶏トス」とありますから、カラス(烏)のような色をしたニワトリ(鶏)っぽい田を護るトリと観察されています。

ほかの種類の野鳥との見分け方は簡単です。全身黒で、わき腹に白い線、そして額から上嘴の付け根にかけての額板といわれる部分が赤、嘴の先端部は黄色といった、なんとも派手な色彩バランスですから、他の鳥と間違えることはないはずです。一回り大きなオオバンは、同じような環境に生息しますが、額板部が白です。バンは、水上や水辺を活動的に動き回りますが、他の淡水系の水鳥と異なり、足の指に水かきやひれがありません。下の写真は、さいたま市見沼自然公園の池を「泳いで」いる若いバンです。

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足に水かきやひれがないせいでしょう、水を渡って行く際には、首を前後に振ることによって少しでも早く前進する補助力としているようです。餌は、水辺の草、その茎、種子の他に、水生昆虫からオタマジャクシと多岐に渡るようです。雌雄同色で、営巣、抱卵、育雛活動は雌雄共同です。どちらかの親が数羽の雛を連れて行進していますとついメス親だと思いがちですが、必ずしもそうとは限らないようです。下左は、雛に餌をやるバン、右は親離れしたばかりのバンの幼鳥です。

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また、はっきりと親ではないと判る一羽の大きめな若鳥が小さい何羽かの雛鳥と連れ添っている様子を見かけることもあります。これは、その年の最初に孵った雛の一羽が、そのまま親もとに留まり、ヘルパーとして2回目の繁殖で孵化した雛(兄弟、姉妹といえますでしょうか)を世話しているものと理解されています。但し、このヘルパーも、額板が完全に赤色化するころにはこの新しい親子の群から離れるようですし、ヘルパーとしてどのように親の役に立っているのかについての観察記録は目にしたことがありません。
バンは季語としては夏を表します。

 
七夕の空暮れぬべく鷭とべり  水原秋桜子
鷭一つ水輪のなかに水輪して  友岡子郷
鷭飛びて 利根ここらより大河めく  菅裸馬


バンは通常、「キュル」または、「クルルル」と聞こえる声で鳴きますが、時として飛びながら、「ケッツ、ケッツ、ケッツ」と聞こえる声で鳴くこともあります。この鳴き声がヒトの笑い声とも聞き取れることから、「鷭の笑い」と聞きなし、それも夏の季語として使用されます。

 
どこからか木霊なりしや鷭笑ふ  佐藤明彦

あなた方の近所の比較的広く、池のある公園(ただしその周辺に水草があることが最低限の条件ですが)をよく観察してみませんか。ひょっとしたらバンが見つかるかもしれませんよ。

注:写真は、画像上をクリックすると拡大します。