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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第47回ダイゼン


第47回 2005/10/01
ダイゼン

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ダイゼン・夏羽
(45)ダイゼン「チドリ目チドリ科」
    英名:Gray(Black-billed)Plover
    学名:Pluvialis squatarola
    漢字表記:大膳
    大きさ:29cm

冬と夏でまったく羽の色が変わってしまう鳥は結構多いのですが、そのうちの一種類、ダイゼンをご紹介します。

野鳥の和名は、なかなか味わい深いものが多いのですが、このダイゼンの名前は、奈良・平安時代に遡るようです。漢字で大膳と書き表しますが、これは律令制下で、宮中の会食用の料理のことを意味します。広辞苑によりますと、大膳職と書いてダイゼンシキと読みますが、これは宮内省に属する、宮中の会食の料理を担当する役所のことで、明治以降この漢字はダイゼンショクと読ませるようになったようです。ということは、その昔は偉い方々の食材だったということでしょう。美味であったかどうかは判りませんが(一般的にシギ、チドリの仲間は大変美味しいとの話を聞いたことがあります)、宮中の料理に出しても格式を損なわない、高貴な食材として認識されていたのではないでしょうか。

さてこのダイゼン、水辺の鳥の中では大きいほうで、よく目立ちます。おおよそキジバトぐらいの大きさです。日本では、全国的に春、3〜5月と秋、8〜10月に訪れる旅鳥といわれていますが、関東の谷津干潟(千葉県)では、数百という大グループで群れを成して越冬しています。ここでは留鳥といってもよいでしょう。そのほかの地域では、夏には、繁殖のため、シベリアなどの北極圏に移動するようです。

特徴が顕著に現れるのが、夏羽です。目の周辺から胸、腹部にかけて真っ黒。上面は黒地に多くの白っぽい斑が沢山ついています。遠くから肉眼で見ると輝きをもった灰色に見えます。顔の黒い部分の周辺と、下腹部は白で、この黒、白、明るい灰色のコントラストがとても優雅な雰囲気を出しているように思えます。写真は、今年5月、まもなく北極圏への飛行を前にし、夏羽に変化し終わった谷津干潟のダイゼンです。脚に認識票がついていますので、研究者の方が見ればどこまで飛んでいくのか判るのかもしれません。

冬羽は、一転してまったく地味になってしまいます。真っ黒かった顔から胸、腹部の模様はまったく消えうせてしまい、白っぽくなってしまいます。また輝きをもっているように見えた白灰色の背中も、褐色味がまし、薄い茶褐色と変化します。

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ダイゼン・冬羽

干潟や河口などの汽水域に飛来して、ゴカイやカニなどを捕食しますが、時として汽水域に生える植物の種子なども食べるようです。ゆっくり歩いたり、急に走ったりと、採餌行動は変化に富んでいて、じっと観察していますと、何気なくそっぽを向いていたのが急にカニなどに襲い掛かったりとフェイント行動とも思える動きさえします。

ダイゼンと同じ環境に棲み、矢張り夏羽では顔から胸にかけて真っ黒になる野鳥、「ムナグロ」がいます。一緒にいますと、ダイゼンの方が一回り大きいのですぐに判りますが、最も判りやすい違いは背中の色です。「ムナグロ」は、英名で Golden Plover といわれるほど夏冬とも背中が黄色っぽいのに対して、ダイゼンは背中が褐色がかったり(冬羽)、白ぽかったり(夏羽)して、決して黄色味があることがありませんので、すぐに区別がつくと思います。

残念ながら、食材としてしか見られなかったからでしょうか、俳句や歌にはダイゼンは見当たりません。ご存知の方がいらっしゃればお教え下さい。下は、千葉県谷津干潟で、ハマシギなどが飛びあがった際、まだ砂地に残っている夏羽、冬羽がまじったダイゼンたちです。

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注:写真は、画像上をクリックすると拡大します。