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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第34回アオバズク


第34回 2004/9/01
アオバズク

34-300
(32)アオバズク「フクロウ目フクロウ科」
    英名:Brown Hawk Owl
    学名:Ninox scutulata
    漢字表記:青葉木菟、青葉梟
    大きさ:29cm    

今回も夏の鳥について。フクロウの仲間、アオバズクです。ミミズクとフクロウは、鳥類学の分類上は区別がありません。(ワシとタカの関係と同じです)普通、側頭部に耳のように見える突起部分(羽角と呼びます)がある種類をミミズク、まったくない種類をフクロウと呼んでいるようですが、このアオバズク、名前からすると「ズク」が付くのですからミミズクのように聞こえますが、この羽角はありません。上の写真で確認下さい。北は北海道から沖縄までの日本全国に、5月下旬から6月初旬、東南アジアから飛来する渡り鳥です。その頃、森の緑が次第にその濃さを増してくることから、青葉の季節に渡来する梟という意味でこの呼称が付けられたといいます。

1000mを越すような高山地帯には生息せず、意外と人里近い森に来て、大木の洞などに営巣します。ヒトの作る営巣箱にも育雛記録があるそうですが、私が見かけてきたのは、たいがい神社の境内にうっそうと茂る落葉広葉樹の大木の洞でした。アオバズクを撮影した写真に、眼の中心、瞳孔部が赤く写ったものがありますが、本来は黒、その周りの虹彩部分は黄色です。アオバズクが夜行性であるところから、夜間撮影のフラッシュの反射で瞳孔が赤くなってしまったものです。「ホッホゥ、ホッホゥ」と2声で夜間よく鳴きます。昼間にはこの声を聞いたことがありません。「ホーッ、ホーッ、ホーッ」と声を長引かせるフクロウとは異なり、意外とせっかちな感がします。

夏の夜中、街灯に集まる昆虫、特に蛾をよく捕食する様子をみかけることができます。蛾のほかにも、カブトムシなどの大型甲虫類や、蛙、コウモリなどの小動物も餌としているようです。大きな木、豊富な昆虫や小動物がなくなれば当然このアオバズクも希少化の一途をたどることが予測され、絶滅危惧種に指定している地方行政体も少なくありません。この鳥の英語名は、よく外見的な特徴を表しています。Brown、褐色のHawk Owl、タカフクロウです。通常フクロウの仲間は、眼や嘴を含む顔の周辺に、頭部との区切りを示す明確な区分線が入っており、この区分線の内部を顔盤といいますが、この顔盤がアオバズクでは明瞭ではありません。ですから横から見ると、タカを思わせる意外と鋭い目つきとあいまって一見タカとも見間違うことがあります。また、背中はかなり濃い褐色をしています(フクロウはかなり白っぽく見える褐色です)。腹部は白っぽい生地に矢張り黒っぽい褐色の大きな縦斑が入っています。この点も一部のタカと似た特徴です。こういうところからBrown Hawk、タカフクロウの形容詞が付けられたのでしょう。

夜行性とはいえ、育雛時期には昼間、巣を離れた親鳥が巣の周りの枝に止まっている姿を見かけることは難しくありません。雛が孵るまではオスが巣を離れた周辺部で周囲を監視し、雛が孵った後はメスがその役割を交代するといわれています。また、巣立ち訓練中の若鳥もよく昼間、写真に撮影されています。ハヤブサなどと同じように、脚はきれいな黄色をしています。雌雄は同色。この鳥が歌で表現されるようになった歴史は意外と浅いようで、アオバズクの名前ででてくる古い歳時記はみかけることができておりません。もっとも、別名で表現されているのかもしれません。

俳句では夏の季語。

 
青葉木菟村に夜遊び廃れずに   大野林火
夫死ねば吾にしねよと青葉木菟  橋本多佳子

近所に神社や寺があり、その周囲を大きな木が取り囲んでいる環境近くにお住まいの方、是非日暮れの後、耳を済ませてください。「ホッホゥ、ホッホゥ」の2連声が何度か聞けるかもしれません。決して幽霊な山深い高山にすむ鳥ではないのですから。

注:写真は、画面上をクリックすると拡大できます。